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ふたりっ子のotomisanのレビュー・感想・評価

ふたりっ子(1996年製作のドラマ)
4.2
 NHK朝のドラマなんて「おしん」とこちらぐらいしか覚えがない。おしんが時勢に翻弄されるように暗き流れのなかを生き通したのに比べ、こっちの二人とも自分自身とお互いを押し合いへし合いしながら歩って行った感じがある。その周囲でも事件がとっかえひっかえ、天気晴朗なれど朝っぱらから波高しが面白かった。もっとも当時見たのはほんの数回ほどだが、最終回は全編見ることができた。それで気付いたのは、此度の再放送は別テイクに差し代わったようで全体が15分より10秒ほど短い。どんな差し障りがあったのか?
 明らかな違いは終盤、山陰線鎧駅から海に臨む丘へ向かい、「結婚しよう」「結婚はせんでええねん」それでも名人位はともに戦おうというといい、二人で昨日の対戦の差し手をなぞりながら歩く場面で、カメラは上空から撮りながら海上へと遠ざかり二人が小さく地上に紛れる絵になっているが、当時はやや高みから撮って野道を戻る二人の後ろ姿を追い続ける絵だったと思った。
 そして、最後の場面は今回、六十三期名人戦最終日での香子の王手なんだが、当時はいかにも浪花でございという感じに鎧駅から四年後、将棋界は群雄割拠で織田、毛利、三枝、上杉?、森山、香子、景気のいい名前を織り交ぜて七人各一冠。そんな均衡を崩す森山2冠目奪取のあとの毛利・香子戦の香子王手の場でビシッと決まったもんだった。それらはどっちも名人戦ではないと覚えているが、あの鎧の場で十分だろうというところ、余計なお世話をダメ押しするあたりは流石、大阪やなーと感心したものだ。あらためて見直してもやはりあの「大阪やなー」という感慨が懐かしくよみがえる。あれは多分エラいブーイングを食らったのだろう、それで今再放送のように差し代わったんだろうが、あの厚かましい大阪はどこにいったのだろう。10秒も短く、ドラマが沸き立つのを廃し結論を急ぐように名人を襲う事にこれが今の、いつからの大阪なんかなー?と思わずに居れない。
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