逃げ恥のような設定だけど、ただのパクリではなくうまく翻案してある。韓国ドラマ特有のメリハリの効きすぎたエグみはなく、まったりとしたなかなかいい雰囲気。テーマ曲も久保田利伸風味のポップスで洒落てる。
驚かないで聞いて欲しい。この物語では誰も交通事故に遭わないし、記憶喪失にもならないし、わがままな財閥の御曹司も出てこないのだ！むしろそうしたドラマを揶揄するセリフも出てくるくらいだから、きっとスタッフは自負と覚悟をもって製作に臨んでいるのだろう。
キスシーンを大仰な劇伴でくさく盛り上げる演出がない韓国ドラマってあったっけ？ 一応ロマンチックなBGMは流れるけどさほど気にならないレベル。うん、劇伴のセンスもいいね。
結婚後、恋に目覚めていく2人の初々しさがとても新鮮で、あたたかく見守っている自分の目線に少したじろぐ。また、チョン・ソミンがかわいいのよ。
主役2人の距離が縮まっていく過程が丁寧に、ゆったりと描かれていて韓国メイドの安っぽさがない。
脇を固めるサブキャラもよくできていて、それぞれ抱えている問題が等身大。悩みの質がリアル。結婚とは、恋愛とは、エゴか愛か、幸せのカタチを変容させる結婚という制度など、ありがちな問題を提起しながらも、なかなか深いところを突いてくる。が、決して理屈をゴリ押ししてくることはなく、そっと寄り添われてる感じが心地いい。
紆余曲折を経て、シンプルな愛情表現であっさり終わるエンディングも爽やか。話が終わってから蛇足が延々続く韓国ドラマにあって、この潔さは白眉といえる。
たまにこういういいドラマに巡り会うと得した気分になる。
