綾

ゲーム・オブ・スローンズ 第六章: 冬の狂風の綾のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

最高。すばらしかった。これまででいちばん好きな章かもしれない。一話一話厚みがすごくて、面白くない瞬間がない。

信仰が揺らいで初めて弱さを見せるメリサンドルに感情移入したり、サーセイとジェイミーの愛は純愛なのだとはっとしたり。どの登場人物もやっぱり嫌いになんてなれなくて、GOTはすごい。

マージェリーが大好きだった。賢さと強かさをここまで武器にした女性キャラクターを他に知らない。慈母の姿は計算尽くだとしても、彼女やタイレルに救われた人はきっと大勢いる。トメンの短い生涯に愛をそえたのも、マージェリー。紛い物かもしれないけれど、ただの嘘とは違うと思う。暴力が支配する世界で、こういう闘い方ができる凛々しさ。牢屋の中でも瞳の輝きは失われていなかった。美しい。タイレルの紋章が薔薇なの、めっちゃわかるしめっちゃ好き。私は確実にロラスのようになると思うので、彼女の生命力がまぶしかった。本当に残念…もっと見ていたかった。

ドーラン・マーテルが「弱い」とされる世界に納得がいかないけれど、暴力を前に寛容も慈悲も無力。GOTで何度も目にしてきた構図やね…
それから、トメンを見ていて思うのは、「君主」ってなんやろうってこと。玉座に座っていても王冠をかぶっていても、求心力がなければ王ではない。『サピエンス全史』で人間は虚構を信じる生き物だって言われていたの、GOTですごく実感する場面が多くて面白い。

ブラン!久しぶり!!!師匠との過去ツアーがすごく好き。わくわくした。ホーダーの物語は、今シーズンで一番心に残っていることの一つ。ホーダーの「ホーダー」はピカチュウくらい喋ってて大好きだった。もう聞けないの寂しい。ブランとミーラを守ってくれてありがとう Sweet giant.

ちょっとジョフリーのことを忘れちゃうくらい恐ろしかったラムジー。残忍さと不遇のかけ合わせ。あれほどの Monster でも、ジョフリーには愛し守ってくれる母がいた。ラムジーの死はもっとスッキリすると思ったのに、全然そんなことなくて愕然とした…

オシャとリコンはようやく戻ってきてくれたのに…… ボルトン公の妻子もそうやけど、ただその家に生まれついたというだけなのに。「血」ってなんやろう。「家」ってなんやろう。現実の中世で殺されてきた王家の子どもたちのことも思ってしまった。

私の知ってるどんな物語のどんな魔術も、死だけはいつも例外で。だからジョンの復活は、嬉しさよりも先に、ほ、ほんまに生き返った…そんなんあり…?とびっくり。ジョンもベリック公も今後何かしらの代償がありそうで怖い。状況は違えど、レディ・クレインが死を避けられなかったように。ジョンもまた、束の間生きながらえただけなのでは…?と不安になる。

ジョラーの “I love you.” と、デナーリスの “When I take the Seven Kingdoms, I need you by my side.” がすばらしい。進撃の巨人とかもそうやけど、人間の残酷な面を真正面から描く作品だからこそ、美しい面がより際立つ。

紅の女祭司と話しているときのヴァリス公、こんな表情するんや……と衝撃やった。なんだかんだGOTでいちばん空恐ろしいのはヴァリス公とベイリッシュ公だと思っている。国家が大事とか、玉座とサンサを欲してるとか。口では言っているけれど、いまだに読めない腹の底。ほんまは何考えてるんやろうね…

死(ホワイトウォーカー)を前にすると、すべての争いが「貴族の小競り合い」になるの、すごく示唆的やなあと思う。争わずにいられないのが人間の性だとしても、戦闘を繰り返す人々を見ていると、どうせみんないずれ死んでしまうのに…と虚しくなる。河合隼雄さんが「優しさとは死すべき者の自覚」とおっしゃっていたのも思い出した。

示唆的といえば、サーセイの報復がトメンを死に追いやったことも。報復はなにも生まないよなあと、何百回目かの痛感。復讐してやりたいって気持ちは痛いほどわかる。それでも。ラムジーが猟犬に襲われるのも、ハイ・スパローが聖堂ごと吹き飛ばされるのも、フレイ公が首切られるのも、なにもかも、思っていたほど嬉しくなんてなくて(もちろんスーッともしたけれど)、虚しかった。

ジェイミーの “Only Cersei.” は、そんなにも……とぐっときたけれど、ブランを塔から突き落としたときと、言ってることの本質は何も変わってないんよね…本当に物事は多面的だなあ…と思う。ジェイミーが大好きになった今、エドミュア公の「お前は自分がまともな人間だと思うか?俺の家族を虐殺したくせに」はショッキングな台詞だった。忘れたわけではないけれど、突きつけられたようだった。と同時に、Red Wedding にジェイミーは直接関与してないのにな…でもジェイミーはラニスターやもんな…間違いなく…とこれまた混沌とした気持ちになる。

ハウンド!!!!ベンジェン叔父さん!!!!熱い!!!!!

リヴァーランの無血開城のシーンで The rain of Castamere が流れるの、たまらない気持ちになった。今更ながら音楽もすばらしいな…

“ A girl is Arya Stark of Winterfell, and I'm going home.” に、ふ〜〜〜〜〜!!!!!!ってなった。ジャクェンの表情含め、めっちゃよかった。数多の顔の神についてはわからないことだらけなので、またじっくり考えてみたい。でも、命ある限り人は No one になんてなれないし、ならなくていいと私は思う。そうだよ!アリア!あなたはアリア・スタークなんだよ!ウィンターフェルの!おかえり、アリア!

かつてのロブに対する “The king in the north !” の結末がどんなものだったか、忘れたわけではないけれど。人との信頼はときに驚くほど脆いものだと知っているけれど。それでも。どうしたって涙がでてきてしまう、忠誠の誓い。熱かった……ティリオンも言ったように、何度裏切られたって人は誰かを信じたくなるし、信じてしまうんやと思う。ティリオンが「手」になったシーンもすばらしかった。デナーリスといえば、ヤーラ姉さんとの目と目の会話も熱かった。

ティリオンにヴァリスにターガリエンにドスラキ族に穢れなき軍団にグレイジョイにタイレルにマーテルに…… そことそことそこが結託するんか!!!そんなん想像できへんわ!!!と大興奮のラスト。個々のストーリーが急速に集結してくるの熱すぎる!!!

観るまえから賛否の激しい結末だときいていた(だから観るのも躊躇していた)GOT。最終章が近づいてきてドキドキしてる。でも、GOTの面白さを示した馬の絵は、今のところ私にはあまりあてはまらないかもしれない。Season7と8もフラットな目線で楽しみ尽くしたいな!!!ほんとに楽しい!!!ありがとうGOT!!!

ジェンドリーとナイメリア(とホットパイの作った狼パン)がアリアと再会できるの、私はまだ信じてるよ…!(ハウンドも…!)
綾