geminidoors

ザ・ナイト・オブ/ナイト・オブ・キリング 失われた記憶のgeminidoorsのレビュー・感想・評価

4.5
犯人探し主体のドラマではなく、人種差別や職業間や親子間や男女間や色々な関係性を、
思い込みや我が身の保身や妥協等、人の心の弱さを巧みに絡ませた脚本。
両親各々の変化や、明かされてゆく表主人公の陰の部分。
弁護士や検察や警官の心理の揺れも、小道具としての猫の存在も、全てが大袈裟ではなく静かに描かれていた。

後半での若い女弁護士の軽率行動だけが最終場面にタトゥーロ演じる弁護士に花を持たせる為の無理矢理設定で、非常に惜しかった。
エ?そりゃナイわ〜って成る場面はその唯一点。

何より大好きなカメレオン俳優タトゥーロが裏の主人公として?静かに大爆発してるじゃないか‼︎彼を好きな人には堪らないドラマだ。
皮膚アレルギーも喘息も家庭崩壊も猫の扱いも、彼にかかるとふざけてる感有りなのにリアリティが感じられるから不思議。正にカメレオン俳優!

余談になるが彼を想えば…デニス・ホッパーが監督した"ハートに火をつけて"での情けないマフィアや、コーエン兄弟の"ビック・リボウスキ"でのセミプロ・ボウラー"ジーザス"役での怪演も最高だが、個人的には"ミラーズ・クロッシング"での嘘つきな弟役での彼を観てほしい。他の追付いを許さぬ名変態脇役だと思う。
主役出演も幾つかあるが、本ドラマ作品での彼は過去の集大成な位に輝いて見えた気がするのは私だけだろうか…

話戻して本作品。
父と、牢内の元ボクサーと、結局はタトゥーロも、捕まった主人公を全編通して"信じる自分"を信じていたと思う。彼らは屹立した人間に見えた。
それは見かけの格好良さではなく、信念みたいな外に出さない部分。
この話の原作者は父性を讃え、母性や女性を懸念している気がしたりも。

表向き主人公は、目に見える元の世界に身体は戻れた。
けれど家族や学校や社会に於いて、先々決して元には戻れないかも知れない。
この話の続きがあるならば〜冒頭、引退した老刑事と検察側のベテラン老女史で真犯人に裁きを与える場面に始まり、社会で浮いてしまった行き場の無い主人公が囚人ボクサーの教えに導かれるかの如く故意に犯罪を犯して捕まり、牢内社会で生き直すみたいな…

なワケないか!
だったらタトゥーロ出る幕無いし…
geminidoors

geminidoors