ながらみ御免

オリーヴ・キタリッジのながらみ御免のレビュー・感想・評価

オリーヴ・キタリッジ(2014年製作のドラマ)
4.0
笑えたり泣けたり面白い映画ではないんだけど最後まで目が離せず、観終えた後からジワジワと「名作だ……」と思わされる。

主人公オリーブは偏屈と辛辣が凝り固まっちゃった嫌な奴だけど、フランシス・マクドーマンドの繊細な演技によって、そういう生き方しかできない不器用さ苦しさがヒシヒシと伝わってきて、最後は、人は…哀しい、哀しいものですね……の境地に。


マクドーマンド以外の俳優さんたちも、それぞれの役柄を明確に、でも類型的にではなく、控えめに演じられていて、物語が先にあるのではなく、こういう人とこういう人が出会ったら確かにこうなるなぁ……という、まさに人間模様を見せられた感じです。
……となるのは脚本も良く演出も良く監督も良かったからで、それはもう名作としか言えない。


----余談1
ジェシー・プレモンスは今作も素晴らしかった。オドオド君から俄マッチョへの変貌をどうしてこうも巧みに表現できるのか不思議。しかしたまには不穏でない役もみてみたいもんです。不穏が似合いすぎるから仕方ないとはいえ。

----余談2
オリーブみたいな人物、男性なら割に演じられてきたと思うんです。イーストウッドとか。それも「頑固親父の美学」としてなかば肯定的に。そして家族とは和解する。
いや女性でもあるか、やり手で気が強くて口が悪くて「でも心は暖かい」タイプなら。そして人には好かれる。

でも本作のオリーブは別に肯定的には描かれていない。家族は諦める。和解はできない。人にも(ほぼ)好かれない。観ている側も、苦労はわかるけど人に当たっちゃ駄目だよ気持ちわかるけど……と、断罪も共感もし難く困ってしまう。
観る人を困らせてなお観続けさせる力があるマクドーマンドはやっぱり凄い。
彼女に伍する存在として思い出されるのは、アンディ・マクダウェル(The Maid)、メリッサ・マッカーシー(Can You Forgive Me?)。こういう面倒くさくて分かりにくい複雑な人物を今後も演じてほしいです。