TaiRa

フェイクニュースのTaiRaのレビュー・感想・評価

フェイクニュース(2018年製作のドラマ)
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野木亜紀子のドラマはどこかクラシカルな雰囲気が漂う。素養が滲み出てるのかもしれない。

新聞社からネットメディアに出向した女記者がひとつのフェイクニュースを取材する内に、そこから芋づる式に問題が浮かび上がって来る。外国人労働者、差別、ブラック企業、セクハラ、そして政治。混沌とした群衆の分断がクライマックスに爆発する。このドラマの良いところは登場人物の印象が最初と最後で変わるところ。悪いヤツと思ったらそうでもない、良いヤツの中にもズルさがある。そもそも良いも悪いもない。人間は誰しも多面的で複雑であり、それは情報も同じである。「自分の見たいものだけを見る」時代に対抗するような多面性を認めたドラマ。現代日本で起きている問題を逐一脚本に取り込む真摯な姿勢が野木作品には共通する。彼女が『ニュースルーム』みたいな作品を書いても面白いかも。野木亜紀子が誰の影響を受けているのか分からないが、今作に関してはフリッツ・ラングやフランク・キャプラまで連想した。ビリー・ワイルダーやエリア・カザンも同様。そこはかとなく橋本忍も感じるのは何だろう。光石研が留置所に入れられる画がそう思わせるのか。時代をコンパクトにまとめた良作だった。
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