岡田拓朗

フェイクニュースの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

フェイクニュース(2018年製作のドラマ)
3.9
フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話

つぶやきは、感情を食べて怪物になる。

‪併せて見ておきたい2記事。‬‬
‪脚本家・野木亜紀子さんがドラマ『フェイクニュース』で描くもの 「間違えた人を徹底的に叩いたら、誰も生き残らない」‬
https://www.huffingtonpost.jp/2018/10/15/akiko-nogi-fakenews-drama_a_23561072/
北川景子さんがドラマ『フェイクニュース』にかけた思い「ネットが怖いんじゃない、取り扱う人間が問題」 https://www.huffingtonpost.jp/2018/10/24/keiko-kitagawa-fakenews_a_23570101/
ハフポスさんさすがです!

先週に前編、本日後編とどちらも鑑賞。
下記レビュー。
真実が事実とは限らない。真実は主観的で事実は客観的。
真実はいつも一つではなく人によって異なっていて、事実が一つなのが正しい。
それこそ事実には目も向けられずに、勝手におもしろおかしくどんどん正しいかどうかもわからない情報が拡散される時代。
ネット中心の現代社会の世知辛さが飛躍的に、でも将来を見据えて現実的に描かれていた作品。
それが「あるいはどこか遠くの戦争の話」と表現されてるのも秀逸。
さすがの野木亜紀子脚本。

事実は曲解する形で、それぞれの真実となり受け入れられ、歪んだ事実が拡散されることで、弱き人間が不幸を被っていくどうしようもない時代。

メディア業界はPV至上主義に陥りがちだが、そのPVを本当の意味での事実を基に、意味のあることを伝えながらものにしていくことが大切である。
東雲樹(北川景子)みたいな信念を持った記者が、結果的にそのような人を受け入れるイーストポストのようなメディアが、日本の報道、メディアのあり方を変革していくのではなかろうか。

受け取り手も、もはやメディアリテラシー云々の問題じゃなく、事実かわからない事実を暇な国民が勝手に事実にしておもしろおかしく騒いでるだけで、そんなことをしてる当人は本当の事実を掴むことすら望んでいない。
みんな事実なんてどうでもいいんだよね。信じたいものを信じる。
自分に都合のいい情報だけを信じておもしろおかしく拡散していく。
それでそんなに責められるべきでない人の生活が崩壊していく。とんでもないですよ。怖い怖い。

それが上記北川景子の記事で言うところの「取り扱う人間が問題」に落とし込まれてる。
悲しい現実だが、日本で報道、メディアが生まれた背景を辿っていくと納得できる部分もあるのが何とも言えない。
海外だと、日本のこのメディアリテラシーのなさと民度の低さ、情報に踊らされている感はあり得ない。
そもそもメディアの生まれ方が全然違うくて、それが問題なのは間違いないんだけど、それを言ってても何の解決にもならない。

結局本質の部分って誰もが他人を煽ることが、生き甲斐になってしまわないように自分のやりたいことに打ち込み続けられる(過度に周りに流されずに、自分のことだけを考えられる)世の中を作らないといけない。
これは生活の大半を占める仕事に前向きに取り組めるだけでも全然違うと思う。
この辺りはホリエモンの著書「自分のことだけ考える。」も併せて見て欲しい。

承認欲求をできるだけ自分で処理できるような何かを見つけられたらいいですよね。
誰かを陥れたり煽ることでなく、むしろ何かを持ち上げたり、自身の考えを表現に落とし込む形で賛同を得て、承認欲求を満たす。
この流れが手っ取り早いような気もしてるけど、なかなか難しいのが現実か。

男女平等が叫ばれていて実現しつつあるこんな時代なのに未だに蔓延る女性記者の肩身の狭さと世知辛い現実、フェイクニュースがおもしろおかしく拡散されていく様、それが会社や人に大きく影響していく様、大手新聞社のとった事実が押し潰される様と癒着関係、PV至上主義の現実、悪意なき天才(才能)が起こす悲劇の怖さ、情報を鵜呑みにすることで起こり得るどこか遠くの戦争…色んな現実と将来起こり得ることを余すことなく脚本に盛り込み、変革の兆しを入れる形に昇華していく展開が凄かった。

ここらで変えていかないと本当にヤバい現実が待っていそうな気がする。
SNSは扱い方ミスると本当にダメですね。
それをしっかりと描き切る野木亜紀子は本当に凄い!

P.S.
北川景子は「フェイクニュース」のみならず、「スマホを落としただけなのに」でも主演を務められる。
確実に情報の受け取り方と扱い方について問題意識を持っているのがわかる。
こういう難しいテーマには、著名人が挑戦してくれるのが一番影響力あって効果もある。
そういう意味で自分ももっと影響力を持てる存在になりたい。
光石研の演技もさすがだったなー。
岡田拓朗

岡田拓朗