所謂女性の成り上がる物語とは少し違った印象。主人公は気の強い女性の設定ではあったが、それは最初以外あまり強く描かれていなかった。主人公が見守る視点で直吉が会社を動かしていく様子がストーリーの軸になっている。
しかし、主人公の心情が印象的な場面がいくつかあった。
・嫁いだ先で子供を3人産むも旦那は主人公にも子供達にも愛情を示すことはなかったが妾がおり、その子供には優しい表情をしていたのを見てしまった時の悲しみ。
・妾の娘が大人になり奉公にやってきた。最初は知らなかったが真実を知ったときの怖さ。
・その娘と、自分が店と同じく目をかけてきた直吉が愛し合ってることで女としてまた母のような立場として、また子供と同じような店をすべてとられるような気持ちになり結婚を認められなかったこと
・結婚を認めず後悔もあったこと
・数年後再会し、今でも直吉と妾の娘が切れてなかったがその距離感ですら堂々としている娘に負けた、と思ったこと
・長年女中をしていた老女にそれは負けではない、直吉をここまでの男に育てたあなたの勝ちだと言われたときの少しふっきれたような笑い
ストーリーの主軸ではなかったが、女の葛藤がよく詰まった話だった。