山岡

スタートレック:ディープ・スペース・ナイン シーズン5の山岡のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

シーズン5までに高まった緊張感が膠着状態を保ったままストーリーが静かに展開したシーズン。

正直なところ、物語がどうも小粒なものが多く、今までのシーズンの中で一番微妙だった気がする。

そして、後味の悪いエピソードが妙に多かったのも特徴。
EP13「エディングトンの逆襲」ではシスコはマキの植民星を壊滅状態に追い込む。EP22「末裔の星」では200年後のオドーがキラ1人のために8000人の人々の存在を消失させる。EP24「眠れるステーション エムポック・ノール」ではウイルスが原因とはいえ艦隊士官を複数人殺害したガラックの良心の呵責は全く描かれない。
スタートレックが勧善懲悪でないのは承知しているし、これまでもビターな終わり方をするエピソードは多々あったが、これらのエピソードは完全に異質なものに思えた。

そんなシーズンにあって、個人的ベストエピソードはEP6「伝説の時空へ」。
シスコたちDS9クルーがTOSの時代にタイムスリップし、人気エピソード「新種クアドトリティケール」のエンタープライズに紛れ込んでしまうという物語で、筋書きだけ見るとありがちなスペシャルエピソードのようだが、映像がとにかく素晴らしい。衣装や美術などがTOS風になっているというだけでなく、照明や映像の質感までもが完全にTOSを再現している。そして見事な合成技術によりDS9クルー、そして視聴者が本当の意味でTOSの世界にタイムスリップしているような感覚を味わうことができる。本当に驚愕のクオリティ。シーズン最高のエピソードであるだけでなく、スタートレックのシリーズ全体でも最高クラスの名作回だと思う。

次点はEP4「戦う勇気」。『プライベート・ライアン』的なアプローチで戦争のリアルな恐怖を描いたエピソードで、いつも冷静なジェイクが戦場を情けなく走り回り、べシアを放ってまで逃亡する様は本当にみっともなく恐ろしい。ゴア描写は控えめだが、不気味な感覚がとても印象に残る。

シーズン全体の印象は弱めだが、最終話となるEP26「DS9撤退の日」ではドミニオンとの全面戦争、そしてDS9撤退という最高のクリフハンガーで締めくくられる。ドミニオンはボーグ初登場時のような圧倒的な強敵感はないが、政治・軍事両面からじわじわと惑星連邦、DS9を追い込んでくる異なる恐ろしさがある。最後にジェイクが記者として残る決断をするのは前述のEP4「戦う勇気」の経験がベースになっていることは明らかであり、このような展開にこそドラマならではの面白さがあると思う。
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