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さとうきび畑の唄のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

さとうきび畑の唄(2003年製作のドラマ)
5.0
那覇で小さな写真館を営む平山幸一(明石家さんま)は、写真を撮りにくる人たちの幸せそうな笑顔を見ているだけで嬉しくなってしまう、人の良い男だ。恋女房の美知子(黒木瞳)とは駆け落ちして結婚。学校の先生をしている紀子(仲間由紀恵)との結婚が決まった長男・勇(坂口憲二)を筆頭に、次男・昇(勝地涼)、長女・美枝(上戸彩)など5人の子供に恵まれ、今また美知子のお腹には6人目の命が宿っていた。
しかし、昭和19年6月、サイパンの日本軍が玉砕し、米軍の沖縄上陸が現実味を帯びてからは、その幸せな一家にも戦争の暗い影が忍び寄る。まず結婚直後の勇に召集令状が届き、昇は通信兵に志願、美枝も従軍看護婦として野戦病院に派遣される。そんな中、戦況はますます悪化し、ついに47歳の幸一にも召集令状が届く。家族で過ごす最後の日、幸一は出征していく子供たちに命の大切さを説く。
森山良子の名曲「さとうきび畑」をモチーフにしたスペシャルドラマ。
幸せな家族に、戦争の影が徐々に忍び寄り、家族が兵隊に取られたり、戦争の中で無残に命を奪われたり、戦争に反対することを言えば敵国のスパイと疑われ迫害されたり、防空壕に隠れていると日本軍に追い出され、赤ちゃんが泣き止まないと「口を押さえて黙らせろ」と脅されるなど、地獄をくぐり辛酸を舐める姿を通して、戦争が人々に与える悲惨さや残酷さが描かれている。
特に、幸一が出征していく子供に命の大切さを説くシーン、勇の戦死を知った紀子が教え子に命の大切さや戦争は全ての人を不幸にすることを説くシーン、負傷した米兵を発見した部隊長が幸一に米兵を殺害するように命令した時に幸一が「私は人殺しをするために生まれたんじゃない」と逆らうシーンが、胸を打つ。
誰かの命も誰かのかけがえのない命、戦争は命を奪う残酷なものということが、じっくりと伝わる傑作ヒューマンドラマ。
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