サンタフェ

マインドハンター シーズン2のサンタフェのレビュー・感想・評価

マインドハンター シーズン2(2018年製作のドラマ)
2.8
えっちらおっちらシーズン2まで完走。正直かなり打ち切り妥当なのでは…と感じてしまいました。

デヴィッド・フィンチャー監督はゾディアックでもそうでしたが、結末に対して創作として面白いものが待っているという信用が皆無なので、ダラダラ地味でストレスフルな展開を見せられつつ結局なにも解決しないという視聴者が支払うコストに対してのリターンが赤字すぎてキツすぎました。

本作ではシーズン1からずっと真打ちみたいなやつをチラチラみせてるのも2時間で確実に結末まで辿り着く映画ならともかくドラマとしてはタチが悪すぎますよね。実際に打ち切りになっているわけですし。さらに先述した通り結末に対する信用も皆無なのでどうせ引っ張った挙句に虚無エンドが待ってるんでしょとしかなりません。

漫画でいうなら謎を追う経過も盛り上がらず結末で肩透かしを食らう浦沢直樹作品、海外ドラマでいうなら「シーズン4くらいの全ての展開が煮詰まってファンしか盛り上がってないシーズン」からいきなり始まったドラマという感じがしてしまいました。(実際の浦沢作品は謎を追う経過パートの盛り上がりが凄いのでかなり好きです)

正直に言うと、本作を最後まで観て本作がシーズン更新されず打ち切られたという事実が逆にNetflixへの信頼をだいぶ増してしまいました。ちゃんと競争原理が働いていると思います。

以下に細かい作品のテーマや主人公のキャラクター造形に感じた問題点を書きます

・メインテーマの一つである「フォードの危うさ」について、作品の構造としてうまく機能していない違和感がありました

・フォードの危うさが問題になりますが、一見猟奇殺人者に近づきすぎることの危うさを描いているようで、実際にFBIで問題視されてるのは単純に「言葉遣いが悪いこと」「手順を踏まないこと」「記録の改竄」なので、いうほど猟奇殺人者と同質化してるわけではありません

・シーズン1で描かれるフォードの問題はせいぜい創作によくある素行が悪いけど物事を解決するアウトロー主人公の範囲内で、ドラマ版ハンニバルのような猟奇殺人者への共感度が異常に高く常人じゃ不可能な発想で犯行を推測できる…ので犯罪者になりかねないみたいな危うさは全く描けていませんでした

・作品の雰囲気は「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」的なお洒落感が出ていますし実際にそういったレビューが多いように感じますが、前述した通りその問題は大して描けていないので、結果的にドラマの縦軸が「プロファイリングの意義が理解されない中で奮闘するアウトロー主人公」なのか「犯罪者に近づきすぎる危うい主人公」なのかどっちつかずになっているのが気持ち悪さの正体かなと感じました

・フォードと猟奇殺人者の関係はどちらかというと同質化というよりは「フォードが目的のために倫理観や手段を選ばずに猟奇殺人者を利用する」という「猟奇殺人者という捕食者をさらに捕食する存在」という風に描かれていたと思います。なのでタイトルが「マインドハンター」なのかなとも思いました

・ただ、その構造だった場合、そもそも猟奇殺人者をある程度無慈悲だとはいえ利用するのがそんな悪いことなのか?という疑問が湧き、実際に作中でも特にフォード以外の刑事ほど猟奇殺人者の人権には一切気にも留めていません。ですから、この問題がどこに向かっているのか私は全くゴールを想像できませんでした

・また本作は「まだプロファイリングが確立していない時代」を描く作品ですが、結局のところフォードの直感が作中でなによりも優れているのでプロファイリングの構築を全く描けていないことも気になりました

・シーズン2は顕著で、散々捜索をして途中で「黒人に拘る必要はないかも。犯人にとっての被害者の共通点は人種以外にもある」みたいな展開を一旦差し込むものも、結局はフォードがかなり初期に定めた条件まんまの犯人でしたので、フォードの直感が何よりも勝るという構造になってしまっています。フォードが「考えが甘かった…」みたいに反省したシーンの意味は特にありませんでした

・このようにシリーズを通して、今まで知られていなかった法則を発見する、常人には気づけない猟奇殺人者にとっての被害者の共通項がある、実は一般的なステレオタイプとは正反対の行動の傾向があった、などといったプロファイリングを研究していく過程の面白さなどは皆無でした。とりわけ主人公フォードがプロファイリング者として成長するみたいな過程が乏しいです

・シーズン2はシーズン1に比べ前述した「フォードが猟奇殺人者と接することで生じる問題」を描写するシーンの割合が減り、単純な捜査シーンが増えた印象でした。

・その結果「本作の比較的特徴を担っていた哲学的シーンが減りドラマとして個性を失う」「よくある事件捜査系ドラマとして観ると大して面白くないことが際立つ」という二重の意味で残念でした

・結局のところシーズン1のフォードの彼女の存在も、シーズン2の博士と彼女の存在も、そして最終的には全編を通した猟奇殺人者とのインタビューも、全てのサブ要素がこの「猟奇殺人者に近づく問題」にも「プロファイリングを構築する過程」にもつながっていないため、このドラマが長期物語軸で何を描いているのか全くわかりませんでした。そして単純に「プロファイリングで事件を解決するドラマ」として観るとクリミナルマインドやハンニバルに比べて凡庸すぎました。

・結果、作品としての強みというと「デヴィッド・フィンチャー監督らしいお洒落な映像と演出(と豪華な役者陣)」という見栄え面のみであり、しかしこれらは全ての作品の平均映像レベルが飛躍的に上昇した現在の配信オリジナル作品郡にあると特別な存在ではないという事実を改めて突きつけられました。
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