まりぃくりすてぃ

トイレの神様のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

トイレの神様(2011年製作のドラマ)
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小3の頃までなぜだか私は乱暴者だった。反省し、陽キャに育った。クリスチャンの両親からは「全知全能の神様にいつも祈りなさい」「心の綺麗な人になりなさい」と教えられていた。。

大学生となって一人暮らしを始めた。トイレ掃除のさいに塩素系と酸素系の薬をうっかり同時に使って「ウッ」と死にかけたり、自分と性格の似た活発すぎる雌猫を飼い始めたりした。
そして3年生の冬、オンボロ軽自動車でパッカー車をイライラ煽りながら走行中、カーラジオのパーソナリティが「今からかける曲は、とても長い曲ですが、どうか最初から最後まで歌詞をよぉ〜ぉく味わってください」と言ったので、何事かと構えたら、「小3の頃からなぜだか お祖母ちゃんと暮らしてた…」と植村花菜という人が弾き語りだした。(マル・オブ・キンタイアとエーデルワイスを今さら足したような) ありふれたメロディーも、いくらかお涙頂戴っぽな歌詞にも、私はワンコーラスでもうがっかりした。
数日後、またカーラジオから同じ曲が流れた。既にダメ烙印だった。
その頃、私は、仲間だった人と対立していた。中立のはずの周りも、八つ当たりなんかしてしまった私を包囲網的に敵視するようになっていた。キレやすい私は鼻息荒く毎日緊張していた。
そんな時に、ラジオから植村花菜さんの「トイレの神様」がまたまた流れてきた。バイト先でのことだった。
「どうしてだろう 人は人を傷つけ 大切なものを失くしてく…」
突如私は、この部分で初めてしんみりした。
お祖母ちゃんが亡くなった大サビのところでは、私は仕事中なのに泣いてしまった!!

すぐに私は、その長い曲が入っているミニアルバム(当時はまだシングルカットなし)を買いに行った。
毎日毎日「トイレの神様」に聴き惚れた。特典として入っていたミュージッククリップ(PV)も気に入った。☟

https://youtu.be/Z2VoEN1iooE?si=jZVA1tkZE4IK0yyC

☝ 曲の世界観を過不足なさげに表現しきっていた。平井千鶴子さん(お祖母ちゃん)と安宅佑菜ちゃん(小3)と水田萌木さん(高校生・成人)が温かみのあるピントいじり画の中でミニマムにリアルに切実に息づいてて、特に、水田さんの出てるシーンはすべて完璧で好感ばかり持てた。特に特に、ラストのネギの飛び出した買い物袋を提げて歩く「気立てのいいお嫁さんになるのが夢」シーンが、そりゃぁね、、、そりゃもう!

ラジオをよく聴く人以外がほとんどまだこの曲を知らなかったその冬から春にかけ、私はありとあらゆる人に「これ聴いてみて」とCD持参で布教した。実家で癌と闘っていた父にもCDを送った。「いいでしょ。いいでしょ」と。
その後、植村花菜さんの自伝「トイレの神様」(宝島社)を入手して読んで植村家のことを細かく知って、それも実家に送った。

年の暮れに父は亡くなってしまった。。。。

いろいろあったが、紅白に花菜さんが出演すると聞いて、私は泣いてばかりで自分自身余裕がないはずなのに、当日当夜彼女がミスらず歌いきれるよう、神様に少し祈った。本当に気が気でなかったのだ。
とりあえず無事に紅白で彼女が歌い終わったのでホッとした。
年明けてすぐ、TVドラマ化されたのをわくわくと観た。そしたら、これはダメな出来だった。

後で父の遺品を少し整理していたら、私が贈った「トイレの神様」の本が出てきた。カバーが少し汚れていた。そしてなぜか、オビ(腰巻き)とカバーが小さく貼ったガムテープで固定されていた。「何もガムテープでおさえなくても…」と私は苦笑しようとしたが、病床で父が寝たまま頑張ってこの本を読んだんだと思うと、汚い貼り方が愛おしい。

ということで、

【オリジナル楽曲+PV】120点

【書籍】100点

【鎌倉音楽祭の動画】100点
 ☟LIVEではこれが一番いい☟
https://youtu.be/dzJ_FwWlZag?si=kJeUGzXTu8VuFqU_

【某動画】40点以上
 ☟この人に会ってみたい☟
https://youtu.be/F6ZIHQCT1zM?si=-KYLxzVWD5SEGUMg

【TVドラマ】39点

……植村花菜さんは世間からは一発屋扱いされているけれど、私は、植村家の内情や彼女の真情を書籍などで知ってしまったために、彼女の「世界一ごはん」なんかもかなり好きだ。

https://youtu.be/BMiQ8tk-OyY?si=yU3Wtoa-TLArilZz


ところで、気立てのいいお嫁さんになれそうになくキレキャラをさらに磨き続けて生きてしまった私は、料理以外の家事が大っ嫌いで、見ただけで絶望的な気持ちになるのが掃除機だったりしたが、なぜかすべての掃除の中でトイレ掃除だけは苦にならない。好きではないがストレスなく毎日する。トイレに神様なんているわけないし、神様に男も女もない。そもそも神様はどこにもいない。でも、いない神様に私はぶつぶつ文句をつけたり、たまに甘えたりする。「あんたは一体何なんだ?」と神様から言われそうだけど、私だって何か言いたい。

で、就職していろいろして年月かなり経って、ある年の霜月半ば、性格悪くて我が強くてプライドが高くなってた私は、クリボッチが少しだけ落ち着かず、波乗りで知り合った下手くそな初心者の男の人(背はすらっとしてるけど、あまり印象的な顔立ちではなく、アスパラガスみたいな雰囲気の人。性格いいけど煙草吸うから、私としては最初っから眼中外)とジョークの延長で「師走になってもお互いボッチだったら、イブにごはん食べに行かない?」「いいね」とキープ利用し合う約束をした。
そしたら、そのまま二人ともほかに出会いがなかったので、約束し直してレストランの予約は私が頑張って取った。一応、何着ていくかとか、五百円程度のプレゼントぐらい持っていこうかしらと私なりに集中力が上がっていった。
そしたら、聖夜直前になって、彼がインフルエンザを理由にドタキャン! 私は怒り狂って自室の壁をごんごん叩き、「ざけんな! インフルなんかかかってんじゃねーよコラ!!」と独り言が収まらない。
まじあいつふざけやがって恥かかせやがって野菜のくせに…とイライラしてその晩なかなか寝つけないほどだった。だって…予約取りにくい店の予約ようやく取ったんだもん。。 体裁を整えるのが習わしのバカ者の私は、わざわざお洋服を新調してたんだもん。。

翌朝も、何だあいつ悪魔か、どうしてやろうかと煮えたぎったままの私だった。が、ピンポンされた。
宅配便。来たのは、四角い包み。
それは、あるクリスチャンの家族からだった。そこの身体の不自由なお婆さんに、私は実家の母とともに数年来あれこれ世話を焼いてあげてきた。その家をたまに訪ねては私が皆を笑わせたりしたきた。
手紙で、一年間の私の親切へのお礼が「メリークリスマス」とともに。包みの中は高級バウムクーヘンだった。嬉しくて私は一気に和んだ。
その晩(聖夜)、宅クリボッチの私は、もらったバウムクーヘンに自分でクリームを乗せ、やばい美味。幸せに。
それとともに……私は反省し始めた。インフルの彼が、今、どれだけ苦しい思いをしてるか。私は、自分のクリの体裁を(しかも愛してるわけでもない知り合って間もない爽やかなだけの友達と)整えたいという欲望がすべてだった。こんなひん曲がった人間、世界の誰からも愛されるわけない!!!!
そこまでやっと悟って縮こまった私は、少し考えてから、決心し、ごそごそして、そしてインフルの彼に電話した。
「大丈夫? つらそうね」
「(ゴホゴホ) いや、今日はほんとごめん。お詫びを何かするから、許して」
「謝る必要なんてないじゃん。昨日、『お大事に』って言い忘れちゃったから、電話したの」
「そう?(ゴホゴホ)ありがとう」
そして私は、用意しておいたキーボードを少し触って、申し出た。
「クリスマスイブだから、一曲歌ってあげようと思うんだけど…」
彼はもちろんびっくりしていた。

私は、お詫びと心配を込めて、クリスチャン家庭の人間だからよく知ってるクリスマス用の賛美歌(世間一般にはあまり知られてない)を、汚い声の弾き語りで電話口で彼に見舞いのクリスマスプレゼントとして贈った。
この曲☟

https://youtu.be/tN5HPIZTX3I?si=oM-8K0mqtjFB8XeN

ぎり何とか間違わずに歌った。
そしたら、聴き終わった彼が、泣いていた。
泣かれてびっくりしてしまった私は、今さらながら照れくさくなってしまって、少し喋ってすぐ電話切った。元気になってもらえたならと、自分もポカポカしていた。
よく考えてみると、ワルツだから「トイレの神様」にかなり似てる。

そんなのがあって、お互いを少しは本当に好きになった。すぐにつきあいだしたのじゃないけど、それからさらに何年も経って、いろいろなことがあって、今の私(たち)がいる。もし彼があの時インフルに罹ってなければ、そして私がいったんキレたこととバウムクーヘンに幸せをもらったことで反省して歌を歌う気になってなければ、そしてバウムクーヘンくれた家とのつきあいがなければ、私が神様を信じるような家庭に生まれなければ、今の私と赤ちゃんと彼(=夫)はいない。

べつに私の人生なんて地球にとってはどうでもいいものなんだけど、これからは自分以外の人の幸せのためにキレずに生きていきたい。キレずにやがて死んでいきたい。(革命ぐらいは起こしたいけど、まあここにはそういうことは書かない。)

「トイレの神様」は、ポール・マッカートニーの生涯最大ヒット曲(英国でイエスタデイよりもシー・ラブズ・ユーよりもヘイ・ジュードよりもヒットし、ボヘミアンラプソディよりも70年代時点では売上が上だった)のマル・オブ・キンタイアよりも、どう聴いてもすばらしい曲だと思いつつ、何のために私がこんな読み終わるのに9分52秒もかかるような長文を急に書いたのか謎すぎて、勝手に体調崩れる。

https://youtu.be/Plhtk_XJqhM?si=GhK5Kz6JrwhGbqv4