渡邉ホマレ

学校の怪談fの渡邉ホマレのレビュー・感想・評価

学校の怪談f(1997年製作のドラマ)
4.0
本作は黒沢清監督作『廃校奇譚』が収録されているというだけで、Jホラーのマスターピースだと断言できる。

少子化の煽りを受け、廃校が決まった校舎。
この殺伐とした校舎そのものが、本作における最大のモンスターであり、「何も起きておらずとも怖い」。コレはかなり大切な要素だ。何故なら学校の階段は数あれど、学校に通っていた我々のほぼ全てが、「実際には何も起きていない」この建物を何故だが階段の舞台にしたがるのだから。

『廃校奇譚』の映像の解釈は、人それぞれであって良いのだと思う。あの氷が何を表しているのか。「凍りついた時間」なのか「凍りにされてしまった」のか、はたまた単純に「ギョッとさせるための装置」でしかなかったのか…。そういった事を鑑賞後に議論し合うのもまた、怪談のオモチロさだと思うからだ。

個人的な解釈として、最もオモチロいと感じるのは、この校舎の歴史が思いの外「浅い」点だ。
浅いにも関わらず、その歴史の中で時を過ごしてきた大人達にとっては固執するにたる物であり、僅かな時しか過ごしていない「未来に進む」べき子供達にとっては、単に迷惑なシロモノでしかない…。

本来なら取るに足らないモノを巡って繰り広げられるある種の闘争は、後の『カリスマ』に通じると感じられるし、そのシロモノに翻弄され、巻き込まれて恐ろしい体験を強いられる子供達は、やっぱり哀れだけれど、それは無理矢理に超拡大解釈すると、前述の『カリスマ』と同様、誰かが過ごした過去や時間によって翻弄される我々の姿と捉えられなくもない…というのは言い過ぎかもしれないが、やはり黒沢清監督作品ならではの創造性があって、たまらなくオモチロいと思う。