TaiRa

ワンダーウォールのTaiRaのレビュー・感想・評価

ワンダーウォール(2018年製作のドラマ)
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京大吉田寮の退去問題を扱ったドラマ。現在進行形の問題をドラマにするのも画期的。

大学側から一方的に寮の退去を命じられた寮生たちのそれぞれ。複数の登場人物を通して描かれる終わりの迫った青春、居場所の喪失。大学という名の社会への反抗が報われない虚しさ、無力感。経済第一主義が文化に何を及ぼすか、それに対し文化をどう守るか、物語の根底にあるのはそういった事だ。それは我々の社会にも共通する閉塞感を生む。システムはいつも個人の心を打ち砕く。戦うことを諦めれば従順な人間となる。それが分かっていても戦う相手が分からない。現在進行形ゆえにハッピーエンドもバッドエンドも用意されないが、必ずしも暗い終わりではない。9月末の退去期限を超えた今でも寮生たちは吉田寮に暮らしている。大学側は寮のライフラインを絶って行くだろう。この闘争に勝ち目はなくとも、徹底して抗わなければならない。吉田寮は本当に魅力的な場所だ。猥雑で自由で多様な空間。猫も可愛い。
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