かりんとう

転校生ナノのかりんとうのレビュー・感想・評価

転校生ナノ(2018年製作のドラマ)
4.2
女子高生版「喪黒福造」

ネトフリのオススメに流れてきたが、実際に見始めるまでに随分時間を要してしまった。
鑑賞前はティーン向け学園ドラマだと思っていたし、タイのドラマのクオリティが未知だったので、どうしても二の足を踏んでいたのだ。

しかしいざ視聴し始めるとこれが本当に面白い。
一話完結ながら続きが気になって一気見してしまった。
これは決して「タイの高校生がわちゃわちゃしながら時に痛い目を見て成長していく」ような学園ドラマではない。

美少女転校生ナノが独自の方法で(時にとってもエグいしやりすぎなときもあるけれど)ターゲットの心の闇や悪事を暴くというもの。
その手法は、幼い頃に見た「笑ゥせぇるすまん」を彷彿とさせる。
しかもこちらは絶世の美少女なのである意味もっと無敵指数が高く感じる。

喪黒福造にしてもナノにしても、彼らは「裁きを与える者」であって決して悪や死神ではない。
そして両者に共通することがもう一つ。
裁きを受ける者がそこに至るまでに、必ず「選択肢」を用意してやっている点だ。
ターゲットは完全に詰む(時に命を落とす)までの間に、何度も思い留まり改心するチャンスはあるのだ。
しかし雪だるまのように触れ上がった心の闇と欲望は、坂を転げ落ちるように肥大化し、最終的には身動きが取れなくなってしまう。
ナノは彼らが欲望を実現する最初の一歩、坂の頂上でほんの少し背中を押す。動き出す最初の動力を与えているだけ。
あとは裁きを受ける者たちが勝手にあらぬ方向へ突き進んで行くのを眺める。
きっとナノは、人間が持つ可能性を信じたい部分も有るのではないかと思う。人間だって捨てたもんじゃない。彼女だってそう思いたいのだ。
だからチャンスを与えている。

【天才に当たる光】では、「すみません盗作でした」と発表会の前の段階で認めていればよかったわけだし、【ハイ・ソサイエティ】では「本当はうち貧乏なんだ」と告白すればよかっただけなのだ。
それで一高校生が信用や友人を一時的に失い、非難の対象になったとしても、彼らの将来が崩壊するわけではない。人の記憶などすぐに消え去る。
それをしなかったばかりに、彼らは醜い雪だるまのまま生地獄の中で大人になる道を自ら選択してしまったのだ。
ティーンネイジャーなんてまだまだ未熟で基本的に愚かなものだ。
自分のいる小さなコミュニティが世界の全てであるように錯覚してしまう。
大人が制裁を受ける(エピソード1.10.12)は問答無用で有りだと思うが、学生たちにはその後の人生でなんらかの救済があると信じたい。

ちなみに各話監督が違うため、たまにナノの方針に整合性がなかったりする。シーズン1では完全に一話完結で主軸となる物語はない。
主軸となる話が展開するのはエピソード2以降で。