なべ

マンダロリアンのなべのレビュー・感想・評価

マンダロリアン(2019年製作のドラマ)
4.0
 プレイボタンを押してすぐわかった。こ、これは西部劇じゃないか!埃っぽい空気、照りつける太陽、治安の悪い街、てか子連れ狼!…おまえら好き放題やってんな!
 マンダロリアン組は確信犯だ。まず自分たちがつくりたい世界があって、それを巧みにSWユニバース上で再構築してるのがわかる。悪くいえばスターウォーズを利用している。
 しかも、いたずらに映画まがいのスケール感を求めることなく、一話完結のテレビドラマと割り切っている。この思いっきりの良さが、あれもこれもと欲張らない潔さが、マンダロリアンを成功へと導いたのだ。
 オビ=ワン・ケノービのレビューで、レガシーを食い潰す遺産ビジネスと書いたが、マンダロリアンは違う。もっと狡猾にレガシーを「活用」している。最初からレガシーに頼り切ったオビ=ワンと違い、初お目見えのキャラクターたちをじっくり深掘りしている。ちゃんと自立できる過去と背景が各キャラに与えられ、一人ひとりの存在感が際立っている。そいつらが紡ぎ出すストーリーのシンプルで力強いこと!オリジナルとはこういうことなのだ。
 レガシーはあくまでレガシー。メインを支えはしても食ったりはしない。そういう謙虚さと過去作へのリスペクトを前提に新しいアプローチを試みる覚悟がマンダロリアンからは立ち昇っている。新しいキャラのためにできることはすべてやったという自負。そこまでやってるからこそ “This is the way”ってセリフが生きてくるのだ。これぞ我らの生きる道!とスタッフの自信と誇りのこもった声が聞こえてくるようではないか。
 マンダロリアンの掟、グローグーのクソかわいさ(ディズニーの連中には商品にしか見えてないだろうが)、人間関係やしがらみ、そうした背景や設定が深掘りしたキャラクターをイキイキと動かし、シンプルなエピソードは一話ごとに緊張と解放を繰り返しながら積み重なり、独自のリズムを刻みながらマンダロリアンって世界の全容を形づくっていく。
 マンダロリアンを見れば、今後スターウォーズのビジネスがどっちに向かうべきかよくわかると思う。現場のつくり手の意地を見せてもらったよ。コンプラとダイバーシティと金儲けしか見ていないディズニー幹部に伝わるといいけど。
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