長内那由多

クォーリーと呼ばれた男の長内那由多のレビュー・感想・評価

クォーリーと呼ばれた男(2016年製作のドラマ)
5.0
1972年、ベトナム帰還兵の男が殺し屋に仕立てられる。70年代映画を思わせるタイトで渋い演出と、主演ローガン・マーシャル・グリーンのパワフルなパフォーマンスで見応え十分。シーズン1 で打ち切られたのが惜しい。

ヒリヒリしたテンションにほれぼれ。演技も演出も一級品。マックス・アラン・コリンズによる原作の魅力も伝わってくる。第4話ではビル・アーウィンがゲスト出演し、またいい味。これだけ揃ってショーランナーのフラーは20年の『Locke & Key』まで撮っていない。

毎話クリフハンガーではなく、心理描写で幕切れし、痺れさせてくれる。E5、コーヒーに分厚いバターというギョッとする組み合わせで、主人公の泥臭い闘争心が露になり、まるでヴィンス・ギリガン組のような巧さ。すっかり悪役づいているピーター・ミュランも迫力だ。

完走。これで打ち切りなのが惜しい。主人公のトラウマと暴力衝動に迫る最終回で、全8話を手掛けた監督グレッグ・ヤイタネスは圧巻の長回しを披露。数々のヒット作に参加してきた職人で、ゲースロ前日譚『House of the Dragon』への登板も決まっている様子。

主人公の相棒を演じるのが『マインドハンター』のチャールズ・マンソン専門俳優デイモン・ヘリマン。ベトナム帰還兵でマザコンの殺し屋という強烈キャラを怪演(しかも母親役がアン・ダウド)。しかし醸し出す寄る辺のない孤独が何ともやるせないのだ。
長内那由多

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