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Zネーション <ファースト・シーズン>の58のレビュー・感想・評価

4.0
なんだかんだ全シーズン鑑賞。
「そうはならんやろ」「なんでやねん」という突っ込みどころの多さと登場人物のアホさに苛立ちながら鑑賞していたが、途中でハタと気付いた。
これは緻密なストーリーやシリアスな人間関係、巧妙な伏線がちりばめられたゾンビウィルスの謎を…といった類の作品ではない。(むしろ埋めっぱなしで忘れ去られた伏線のが多い)
これは制作陣が「おれはとにかくゾンビが撮りたい」「ゾンビのこんなシーンが撮りたい」「ゾンビすき」という欲求を満たすためだけに作られた、ゾンビ愛だけで撮られた作品だった。二次創作の同人誌的な、もはやサメ好きによるサメ映画に近い。

前述の「そうはならんやろ」もそれをわかった上で「あーわかるそっちのがゾンビかっこよく退治できるもんね…」という視点で見始めると、愚行もご都合主義もすべてが必要に見えてきて、むしろそのアホさが心地よくなってくる。わずか30秒前に自分で発したセリフと矛盾するような行動をぶちかましても、そっちのがかっこよく退治できるならやむなし。すべてはゾンビの為に。
あっさりワンパンで撃退する時と、やたらてこずったり拘ったりして撃退する時の差が激しいのも「だってそういう画が撮りたかったんだもん!」が透けて見えてきて、苛立つどころかむしろ何故かほっこりした気分にすらなれる。

基本一話でひと山完結だが、たまにどこかで見たような映画のプロットなのも「この映画をゾンビ入りで見たい(撮りたい)、俺ならこうやってゾンビ出すのに(?)」という欲求のなせる業かもしれない。
ウォーキングデッド的なもの期待して真面目に四つに組んで鑑賞すると苛立ちではげそうになるが、「細けぇことはいいんだよイカシたゾンビワールドを見せてくれ!」という欲求にはもう全力で応えてくれている。
ただのゾンビ、動物ゾンビ、赤さんゾンビ、走るゾンビ、草生えるゾンビ、光るゾンビ、賢いゾンビ、半分ゾンビ、不死身ゾンビ、(続シーズン分含む)もう思いついたゾンビ全部入り。
愛に溢れていると感じるポイントとしてどのゾンビも造形はすさまじく秀逸で、破綻の無いストーリーにかけるリソースがあるならその分全てゾンビの造形に費やす、という気概を感じずにはいられない。

フレンチのコースが食べたかったのに二郎系ラーメン出てきた!となるとレビューが賛否分かれるのも道理だが、最初からおいしい二郎系(全部増し)が食べたい人にはとてもおすすめな新しい形のゾンビドラマだった。
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