とても好みだった。
佐久間は決して良い人間ではない。悪意でなくとも罪は罪。その罪を償わず、何度も脱獄を試みる様は看守の態度を踏まえても自己中心的でしかない。なのに、なぜか佐久間に心を寄せてしまう。蒲田看守長が言っていたように、佐久間はとても正直な人間だからなのか。蒲田看守長が自分の理想としていた人柄ではないと思った時、宣戦布告をする。けれど、ずっと"おやじ"と名称を変えなかった。優しくされ、それが自分にとってとても嬉しかったことを、きっと佐久間はずっと覚えていたのだろうと思う。傷ついたときの優しさは本当に染みる。そして慕った相手も間違えていなかった。蒲田も蒲田で、しっかりと最後まで対人間として向き合った。
どんな状況でも、相手を尊重し、なにより理解しようという姿勢はきっと相手につたわる、そんな希望が持てる話だった。
