ねまる

腐女子、うっかりゲイに告る。のねまるのレビュー・感想・評価

4.9
誰かを"何か"だと括って、簡単にして世界をわかりやすくしようと人間はする。
まるで、物理で言う摩擦0みたいに。

自らのマイノリティを明かすと、そのマイノリティがその人を表す"何か"になってしまう社会。
それに対する反抗、個としての認め合いを描くことが根幹としてある話だから、自分の中に固定概念や偏見があったことが見つかってハッとさせられる。

世界のムーブメントを見ていると、当たり前に感じてしまう存在も今の日本ではまだまだだ。
ゲイの少年が、結婚して子供を持ちたいというのにびっくりしたり、気持ち悪いと思われたくない=自分を気持ち悪いと思いたくないから普通の恋愛がしたいと泣くの見なきゃいけなかったり、悪意のない発言にものすごい悲しさを覚えてしまったり。

5.6話が特に琴線に触れて。
たった一つの出来事で揺れ動く2人の内面が伝わって、胸がドキンと痛くなる。
安藤純の中にある、絶望に触れるたびに、心臓が花火みたいにドカンと破裂するみたいに苦しい。
安藤くんの「こんな風に生まれてきた僕が悪い、もう疲れた」とボヘミアン・ラプソディ。
ひとりぼっちの教室で聞くSave me。
Queenの音楽がさらに気持ちを掻き立てる。
苦しすぎて再生を止めたり、画面から目を背けたりした。
その絶望に触れる三浦さんもまた然り。
自分でも呆れるほど涙が止まらない。
途中から30分ひたすら涙を流し続けた。
安藤くんの絶望が伝わってくるたび、
三浦さん、亮平のピュアな明るさと優しさを受けるたび、涙がぼろぼろぼろぼろ。
観終わった後もしんどくなるような涙ではなく、爽やかで暖かい涙。

特に評判の7話は、学校の全校スピーチという名言もってこいのメインシーンだったけど、アウティングが気になってしまったかな。

私のマイノリティは性的志向でも、腐女子でもないからといって他人事では無い、今自分の生きてる社会の話。

傑作。心の底から傑作。
2022年に観た作品でベスト。
ねまる

ねまる