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宮廷の諍い女のtanziのレビュー・感想・評価

宮廷の諍い女(2011年製作のドラマ)
4.8
昔、見始めて前半でリタイアしたドラマ。

 あれから後宮ドラマを何作か見たし、解像度が上がってるだろうと再チャレンジしたら面白くて連日放送が待ちきれずにドンドン進んでしまい76話をあっという間に終えてしまった。
この熱の上がりようは久しぶりやん、面白かった!

全編見終えて、このドラマが長らく“神劇“と言われる所以として、後宮がただの「諍い女」の集う場所じゃないと感じさせてくれたからなのだと思う。

彼女らは、恋すら知らぬ少女のうちに死ぬまで出られない後宮に入り皇帝の子を産む義務を負う。
そこには同様の女達が大勢いて家柄寵愛で序列が決まる。
すでに正妻皇后がいれば、どれほど寵愛を受けても側妻止まり。
そこで生き延びるには「皇帝を愛している」と自分に言い聞かせるほかない。いわば外圧による洗脳を自らで強化して、やっと立っていられるのですね。

しかも重臣官吏の親を持つ身であるほど密接に実家一族の命運をも大きく担うことになる。

冴えないオッサンなうえ性格が歪んでいて年齢が祖父ほど離れていようが、彼女らに「それしか」道は残されていないのであります。

そんな境遇を分かり易く可視化するために陳建斌を雍正帝にキャスティングしたのはお見事。皇帝がイケメン美オジでは身の毛もよだつ非情さは薄れてしまったと想像します。

また、その雍正帝ですら“九子奪嫡“という一族間の死闘をくぐり抜け辿り着いた皇帝の座であるがゆえ猜疑心の塊と化し、幼少時に実母の元で暮らすことが出来ず別の男を愛している母の真の姿を目撃したという背景を持つ。

76話という長尺は、妃嬪だけでなくこうした登場人物の心情を綿密に描くため必要なのだと納得しました。
結果、誰一人として望んだものを手にした者はいないという結末には身震いを抑えられません。

そして、クライマックスのやり取り。
今後そう何度も別ドラマで使えない、だからこそ唯一無二の物語に昇華させた最終話がこの作品を神劇に押し上げたと確信します。大傑作。
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