ナーオー

トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリーのナーオーのレビュー・感想・評価

5.0
製作スタッフが一新、仕切り直しとなったシーズン4……

シリーズの生みの親であるニック・ピゾラットはまさかの降板。HBOのライバル局FXに移ったことが一番の理由と言われていますが、個人的にはシーズン2の失敗、シーズン3で持ち直したけど、それでもシーズン1を超えることができなかったことも関係していると思います。

そもそもニック・ピゾラットが手掛けた作品の中で『トゥルーディテクティブ』シーズン1は突出して出来が良かった。ドラマの間にはアントワーン・フークア監督の『マグニフィセント・セブン』や『ギルティ』の脚本を担当していましたが、『マグニフィセント・セブン』はピゾラットよりも共同脚本家のリチャード・ウェンクの作風が非常に強い作品でしたし、単独で脚本を務めたリメイク版『ギルティ』は清々しいほどの単なる焼き直しリメイクだったり… 実は一発屋なのではないのか… と言われるのも仕方がない。なので言い方は悪いけど、クビになったのも無理はない…

ピゾラット本人は今回のシーズン4は気に入らないようですが、シーズン1を超えたか と言われると難しいところですが、少なくともシーズン2や3より圧倒的に面白かったです。

今回新たなショーランナー兼監督として白羽の矢が立ったイッサ・ロペス。日本ではまだまだ無名の監督ですが、メキシコ国内ではすでに高い評価を確立されている映画作家。今後はメキシコのカトリック学校で発生した集団ヒステリーを描く作品をブラムハウスで製作予定だったり。とはいえ日本で観られる監督作はメキシコ麻薬戦争を孤児の視点で描いた社会派ホラーファンタジーの『ザ・マミー』くらい。

そんなイッサ・ロペスが全話監督を務めているだけあり、シリーズで最もホラー色の強い作品でした。幽霊描写には賛否が分かれると思いますが、『トゥルーディテクティブ』が他の刑事ドラマと何が違うか というのことが今回のシーズン4で改めてよく分かりました。

それは 不気味さ だと思います。

ビリー・アイリッシュのテーマ曲も相まってとにかく不気味な今回のシーズン4。舞台となるアラスカ。どこまでも広がる雪景色。コーエン兄弟の『ファーゴ』やテイラー・シェリダンの『ウインド・リバー』を連想する人も多いと思いますが、極夜ということもあって個人的に一番連想したのは『遊星からの物体X』です。実際イッサ・ロペスは『遊星からの物体X』はもちろん、『シャイニング』も参考にしたとコメントしていたり。

オカルト・ホラーの一歩手前の刑事ドラマこと『トゥルーディテクティブ』の魅の一つだも思います。

そして主演のジョディ・フォスター。
シーズン4の主演がジョディ・フォスターと聞いた時は驚きました。『羊たちの沈黙』をどうしても思い出させる役柄ですが、本作のジョディ・フォスターはこのシリーズの主人公らしく、警官としては優秀だけど人間としては最低。欠点だらけの女性警官を熱演していました。

また観た人の記憶に絶対に残るであろう 強烈な死体。ディアトロフ峠事件を思い出すエグさ。この死体にはギレルモ・デル・トロ映画に携わってきた美術スタッフが製作したそうですが、デル・トロ監督作でもここまで恐ろしいものはなかった。

全体的にはシーズン1の次に好きな作品です。強いて言うならシーズン1第4話のあっと驚くワンカットやシーズン2第4話の凄まじい銃撃戦みたいなアクションがなかったことが残念でした。

本作に引き続きイッサ・ロペスがショーランナーを務めると言われている、シーズン5も期待しています。
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