Blue

トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリーのBlueのレビュー・感想・評価

5.0
期待を裏切らない出来でした。filmarksに表示されるシーズン4のポスター/画像は、2人の警官が凍った湖面をライトで照らしています。
これは見ようによっては見ている側の私達をライトで照らしてともとれる。凍った湖面/私達視聴者の現実が凍ってるともとれるし、私達/羊たちが沈黙してるという事を指してるかのようです。ナイトカントリーという意味も考えてみると今年アメリカの大統領選がありますから、かなりそこも意識してると思います。さらにもう一つ意味があるように思える。
ジョディフォスターの代表作ともいえる羊たちの沈黙。
この作品はいわばニーチェの有名な言葉、私達が深淵をのぞきこむ時、深淵もまた私達をのぞいてる、という事をテーマにしたかのような映画です。
このtruedetectiveのシーズン1でも同じようなテーマ性がありますし、このドラマもポスターでジョディフォスター演じる警察署長がライトを照らして深淵を覗いているという事がうかがえる。

分断されたかのような民族的価値観、そして格差社会、歴史修正という名の根拠のない暴論の闇が覆い尽くしているかのような状況をジョディフォスターもかなり意識しつつ、今回再び羊たちの沈黙を意識しながら制作したのだと思います。

アラスカには私も釣りで一度でも訪れた事がありますが、1990年代にアザラシ漁を禁止するように呼びかけるデモがヨーロッパの10代を中心に巻き起こり、これが大きなうねりをあげて自然保護団体や動物愛護、そして政治家を巻き込んで一気に国連で厳しく取り締まられるようになり、漁そのもの自体をやめる人が多くいました。
船で網を引っ張り一網打尽のごとく漁をするわけでもなく、穴から出てきたアザラシを銃で撃ち取るくらいの狩猟でしたが、土着的に根づいた文化を否定されて、酒、ドラッグ、暴力が蔓延してるような状況がかなりある、とツアーガイドが言っていて、複雑な気持ちになったのはとても憶えています。

かつてマタギ/猟師は冬山に入り、猛吹雪になるとその寒さと暗闇の中で錯乱状態になって風が女性の悲鳴に聞こえたと言われ、山の神は女性と言われていました。
またホワイトアウトになると、視界は暗闇でもないのに真っ白でなにも見えない状況が、脳が誤作動して平衡感覚が狂い、立っていられなくなったりすると聞きます。
北海道出身でそれに近い事は経験した事はありますが、除雪車を運転する方が一度、猛吹雪で行方不明になった人を発見した時に、その人は木にしがみついて錯乱していたという話を聞きました。
車から離れて近隣の家に助けを求めていたら訳がわからなくなり、木が人に見えたという事でした。
アラスカは北海道よりも過酷な自然環境です。その上でこのドラマを見た時にナヴァロを演じたカリレイスの目に、その身体に、実に苛酷な自然を生き抜く姿と、アラスカそのものを体現していたと思います。

俳優で最も好きな人であるジョディフォスターも素晴らしく、叫び声を聞くシーンは羊たちの沈黙のあるシーンを思い出してサービス旺盛だなぁと思いつつ、とても嬉しかった。なにより彼女がまたフロントラインに立ったかのようでこのドラマを通して胸が熱くなりました。
まぁ、このテーマで映画ではなくドラマにしたというのは、少し以外でしたが。
ホラー演出がところどころあるので万人向けではないかも知れませんが、本当に期待を裏切らない作品でした。シーズン5も楽しみです。

あと私なりのラストの考察は第6話のネタバレありのレビュー欄に書きましたので、もしよければご覧ください。
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