ソウキチ

トゥルー・ディテクティブ 猟奇犯罪捜査のソウキチのレビュー・感想・評価

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TRUE DETECTIVEはここまでのシーズンを通して、作劇のアプローチに一貫性がなく、シーズン毎にまるで違うドラマのように見える。しかし主軸となる猟奇犯罪を通して、登場人物の抱える根源的恐怖を浮かび上がらせることこそが本シリーズ共通のシグネチャーであると理解した。

今シーズンの主人公のヘイズは、どの時代においても常に何かに怯えるような表情をみせる。従軍の際には長距離偵察部隊に所属していたという設定にも象徴される彼の根源にあるのは「大事な何かを見落としていないか」というおそれだ。戦争が終わり、刑事という職業についたあともそのおそれを払拭するかのように捜査をする。その"仕事"に偏執的にのめり込むあまり、家族という大切なものを見失ってしまう袋小路に迷い込む。その結果ついには認知の彼岸にまでいってしまう。

そしていつも事件の核心に迫るのは、妻の残した書籍。傍にいた妻の方が真相に近づいていたのである。「大事な何かを見落としていないか」に取り憑かれるあまりに大事な何かを見落としまうという大いなる矛盾。もしくは大切なものを見落としているからこそ、"仕事"という強壮剤の中毒になってしまうのか。中盤のスーパーマーケットで一瞬の隙に我が子を見失ってしまうというシーンがとても印象に残っている。

ラストシーン、遂に"仕事"から解放され、夢想の中でやっと妻の前で素直に涙を流せる男になったヘイズに心を動かされずにはいられない。

このシリーズは猟奇犯罪や人身売買という我々の日常生活からは想像が難しい題材をつかって、誰もが抱える闇や恐怖を炙り出すから面白いのだと思う。ひとりの男の恐怖についての人生ドラマとしてとても見応えのあるシーズンでした。
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