とてつもないリアリティ。
とてつもなく地味。
そして「地味」というのが、けっして「面白くない」と同義ではないことを、今作は身をもって示している。
1945年、第二次世界大戦後のロンドン。
米国戦略情報局によって雇われた、イギリス人女性が、内閣府に潜伏するソ連のスパイを摘発する。
「これぞイギリスドラマ」
というべきクオリティ。
何より脚本がしっかりしている。
登場人物ひとりひとりの名前が、各話の題になっているように、人物描写の掘り下げ方が深い。
そしてそれを体現する、俳優陣の全体のレベルが高い。
脚本、俳優、この両輪によって、ドラマが駆動する。
実際「謎解き」は、シリーズの途中であっさりと明かされる。
そこからが、今作の真骨頂。
イギリス、アメリカ、ロシア、そしてそれぞれ個人の思惑が絡まり合い、ドラマをうねらせる。
マイケル・スタールバーグ演じる、アメリカ戦略情報局のトーマス・ロウ。
キーリー・ホーズ演じる内閣府女性職員プリシラ・ギャリック。
この二大巨頭の個性が光る。
その間で翻弄される、エマ・アップルトン演じるフィーフ・シモンズ。
イギリス人なのに、アメリカ諜報員、つまり二重スパイ。
しかも若い女性。
「若く美しい君は簡単に秘密を聞き出せる
大きな利点だ」
大戦直後という激変する情勢のなか、パレスチナ問題などをからめるのは非常に上手い。
誰が見ても、「面白い」作品とは言えないかもしれない。
しかし充分に見応えのある作品であるのには、違いない。
イギリスドラマは裏切らない。