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太平記のtubameのレビュー・感想・評価

太平記(1991年製作のドラマ)
4.0
かなりレビュー遅くなったけど、BS再放送にて完走済。


大河では珍しい鎌倉末期~南北朝時代の作品で、観る前から楽しみにしていた。
当時は若手俳優の出演が多くトレンディ大河と呼ばれていたそうだけど、足利尊氏役・真田広之の存在感は圧倒的で、爽やかな青年期と老獪な晩年での印象の違いに驚かされた。しかし武者姿の美しいこと。

前半の大きな見せ場、北条氏の滅亡。退廃していた鎌倉幕府の瓦解は、北条高時にキャスティングされた片岡鶴太郎の怪演もあり記憶に残る。
その他にも少年武将に後藤久美子を配置したり、色々珍しい配役が多かったのかなと。
評判を聴いて期待していた後醍醐帝役の片岡孝夫(現・仁左衛門)の気品ある姿も美しく、視聴の楽しみの一つだった。尊氏が惚れ込むのも納得。


後半は打倒北条で纏まった武士がバラバラに分裂し、北朝・南朝の対立、さらには尊氏と弟の対立と所謂内輪揉めが長く展開していく。
大河のホームドラマ路線変更前ということもあり、肉親の争いは綺麗事にせず正面から描かれている。
ずっと葛藤しながらも結局は私より公を重んじ、最終回の結末へ向かっていく尊氏像が彼の人間味と激しさ両方を感じさせるものになっていてバランスがとれた表現だった。
個人的に歴史ドラマで過度に現代の価値観で描かれることがあまり好みでないが、この描写は納得できるものだった。
とりわけ北畠親子の悲劇に重ねるように尊氏親子の関係性が対比的に描かれる回は、子供たち、またそれを後見する弟との間で揺れる尊氏の複雑な心中が察せられ非常に良かった。


個人的には手堅い造りで見応えある作品と感じた。
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