伊藤ライナ

マンゴーの樹の下で〜ルソン島、戦火の約束〜の伊藤ライナのレビュー・感想・評価

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以前、母方の葬儀でお酌をしてまわったときのこと。満州従軍の話しで自慢げに絡み酒をするおじいちゃんがいて、周りの人達は毎度のことでウザがっていたが自分は興味があったので根掘り葉掘り聞いてやろうと思ってその人の隣に座って酌を続けた。始めのうちはドヤ顔で語っていたがそのうち様子が変わった。遠くを見ているように目はうつろで言葉も歯切れが悪い。これは飲ませすぎたか?と思ったが、もしかしたら何かを思い出してしまったせいなのではないか。自分はこの人が開けたくない記憶の蓋を開けてしまったのではないか。
なにか悪いことをしたような気になり自分は席を外した。だが今にしてみればもっと聞くべきだったと思う。自慢話のその奥にある記憶を。それこそが重要で語り継ぐべき戦争体験だったかもしれないのだから。
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