オジサン

仮面ライダーのオジサンのレビュー・感想・評価

仮面ライダー(1971年製作のドラマ)
5.0
国内の等身大特撮ヒーローの金字塔である仮面ライダーですが、はっきり言って全98話に劇場作品が2作とあって各回は連続性のない昭和の時代の勧善懲悪の活劇ものです。
単純な作品の評価などしようがありません。
しかし、それでも敢えてのこの評価です。

昭和の世界のヒーロー像とは、完全無欠の非の打ち所がない完璧な超人。
仮面ライダーの本郷猛や一文字隼人の改造人間としての苦悩だとかは、よく石ノ森章太郎先生の萬画版が挙げられますが、敢えて子供たちを中心に一大ムーブメントを巻き起こした特撮テレビ番組の仮面ライダーについてレビューします。

まず、私は仮面ライダーシリーズというか昭和仮面ライダーですかね厳密には。とにかく仮面ライダーを構成していた要素がよく言われるようなものも含めて3つあると思います。

ひとつは、科学。
もうひとつは、怪奇性。
最後は、人との繋がりという意味での縁です。

科学は文字通り改造人間からしてオーバーテクノロジーですし、ショッカーが計画する世界征服のための秘密兵器は常に往々にして何かしらの技術発明でした。

そして、第1クールで本郷猛が仮面ライダーに変身する際はナレーションで、本郷猛はベルトに風圧を受けて仮面ライダーに変身するのだ!とあります。
自然科学も科学です。そして、仮面ライダーでありますから彼らが跨がるオートバイも科学で生み出されたものです。

次は怪奇性。
もうこれに関しては言うまでもありませんよね。
科学で生み出された筈のショッカーの怪人たちは皆一様に不気味で嫌悪感を抱く姿や能力で世界各地で暗躍しています。

人との繋がりという意味での縁ですが、本郷猛は立花藤兵衛といった支援者は最初からいましたが、その心は常に孤独の戦いでした。
それが一文字隼人になると仲間たちと協力すればどんな困難も乗り越えられると独白するシーンすらあります。
そして、海外のショッカーと戦っていて日本に帰ってきた本郷猛も明るくなり仲間と共にショッカーと戦っていきます。
それでも本郷猛は最初からショッカーの犠牲者を自分で最後にしたいと願い、戦う道を劇中で選んでいます。

私の持論になりますが、人間の多くは心身共に弱い癖に個人主義の生き物だと思います。
だから善人は自分のために善行に励んで、その副次的産物として他者を救って善人だと認められるのです。
その逆に悪人は自分のために悪事を働き、その結果として他者に危害を与えて悪人だと恐れおののかれます。
そして、個人主義の人間は弱いからこそ自分が傷付くのを恐れて孤独を選ぶ人もいるのです。

人間性とは何かを考えた時に、その答えは難しくないと思います。
他者のために怒れて、他者のために悲しめて、他者のために頑張れる。
私は人間という生き物は性善的な生き物でもあると思っていて、そういうものが人間らしさではないでしょうかと結構真面目に思っています。

要するに、例えば他人の子供が道路で車に轢かれそうになっていたとします。
あなたはどうしますか?ということであって、何か行動するかその気持ちがあるかどうかがこの話の軸になるわけです。

1971年の特撮テレビ番組仮面ライダーはこういうことを明言しながら描かれた作品ではありません。
平成に生まれた私が勝手にそう思っているだけの話ですが、私の中の仮面ライダーとはこうなのです。

星5つなのはある意味で当然というかなんというか。
仮面ライダーは素晴らしいヒーローだと私は思います。
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