オジサン

仮面ライダーストロンガーのオジサンのレビュー・感想・評価

仮面ライダーストロンガー(1975年製作のドラマ)
5.0
私がガチ勢を気取っている昭和第一期とファンから呼ばれる最後のシリーズ五作目の仮面ライダーストロンガーは、今までのノウハウを注ぎ込み当時の仮面ライダーの集大成でもあります。

とにかく第1話は仮面ライダーストロンガーの城茂と相棒のタックルである岬ユリ子がどうやって改造人間になったのかだとか、何故本作品の悪の組織ブラックサタンと戦うようになったのかとかは一切語られません。

とにかく二人とも大胆不敵に勝ち気でお互いに小競り合いしながらもブラックサタンの悪事を暴き、そして挫くという展開がいきなりドーンと来るのですが、続く第2話でその回のタイトルにもある通りにストロンガーとタックルの誕生秘話が語られるのです。

このような形式って最初は主人公の背景は語られず、後々に明かされると表現すれば現代でも通じる手法で、つまり仮面ライダーストロンガーという作品は敢えてお決まりの展開を外しにきたわけです。

それで城茂というキャラクターは最初は凄いべらんめえ口調の悪ぶった大人というのが私の子供の頃の印象なのですが、城茂は親友の復讐のためにブラックサタンに敢えて自分を改造させてそのブラックサタンを壊滅させて世界の平和を守っちゃうぜ、だからついでに仮面ライダーを名乗るねみたいな、そこら辺は凄い雑なのですが、そのストロンガーのエネルギー源となるのが電気です。

現代から見たら別になんとも不思議でも何でもないエネルギーだと思うのですが、スーパーロボットアニメだとかでは未知の超エネルギーだとかを運用してたりする中で、等身大特撮ヒーローのシリーズも五作目に突入した当時では子供向け長寿シリーズで電気って凄いと思います。

まず電気ほどの偉大な発見というか、発電という発明というか、学が足りてないのでどう表現すればいいのかを知らないのですが、現代でも誰しもが恩恵を受けている不変的なエネルギーですよ電気って。
先見性とでも言いましょうか、とにかくその電気エネルギーで川の水は一瞬で蒸発させては、落雷を呼び起こさせ、バリアは張るわ、電気分解とか意味の判らない能力で瞬間移動的なことができるしともう滅茶苦茶です。

そして、ストロンガーという作品に欠かせないのが相棒の女性戦士の電波人間タックルです。
当時の女の子たちも仮面ライダーごっこをしたい中で女性仮面ライダー案というのも存在しないわけでもない時に、せめてもの代替え案としてあくまでも仮面ライダーではない女性戦士という位置付けで登場したのがタックルです。

タックルは戦闘員には勝るもののブラックサタンの怪人である奇っ械人には力及ばず、人質となることもしばしばで、それでも平成仮面ライダーシリーズのような険悪さでは決してないのですが岬ユリ子は城茂と手柄を競うような強い女性として描かれています。

仮面ライダーストロンガーのタックルと同時期の秘密戦隊ゴレンジャーに登場するモモレンジャーとの違いは、タックルは相棒でもあくまでも脇役でモモレンジャーは主役の一人というのがあって、これが当時の東映の精一杯だったのでしょうきっと。

それでも岬ユリ子のキャラクター造詣だとか、後年のシリーズでの扱いだとかを見るに、仮面ライダーシリーズのひとつの転換を担ったキャラクターでもあると思います。

仮面ライダーストロンガーという作品において欠かせない要素がもうひとつあって、それはストロンガーのライバルキャラクターとなる悪役たちです。
はっきり言ってブラックサタンの奇っ械人ではストロンガーの相手になりません。
ストロンガーという名前からして最強の仮面ライダーとして設定されたストロンガーと互角に戦えるのは従来の悪の組織の大幹部という構造がまず先にあって、なんなら番組当初はストロンガーはその大幹部に手も足も出ずにあしらわれたりして。

そこがまた漫画チックでストロンガーも段々と強くなっていって大幹部たちと渡り合っていくのですが、その大幹部たちのことを語り出すと数が多いので割愛しますが、そういう作品なのでライバルの大幹部たちも魅力のある悪役が多かったりします。

番組後半は魔の国からやって来たかつて人間を苦しめた魔人の子孫の末裔である改造魔人で構成されるデルザー軍団というなんだか壮大な設定の悪の組織が登場するのですが、組織の構成員は十数名でも一人一人がブラックサタンを含めた過去作品の大幹部クラスというやっぱり凄い設定で。

おまけに改造魔人たちはストロンガー必殺のために電気対策をしていて、ではストロンガーはどう立ち向かうのかといえばシリーズ初の多段変身、今風に言えばフォームチェンジのチャージアップを再改造で手に入れるわけなのですが、そこにも縦軸のドラマというものがあって、番組の最後は素顔の歴代ライダー全員集合となるわけです。

仮面ライダーストロンガーという作品はそれまでのノウハウを全て注ぎ入れて、勧善懲悪の正しい特撮ヒーロー番組としての仮面ライダーに原点回帰した快作という印象ですね。
なので、大人びたお子さんやそれこそ大人が視聴したらちょっとキツイ面がある作品というのも事実ですが、仮面ライダーと仮面ライダーV3で確立した仮面ライダー像を仮面ライダーX、仮面ライダーアマゾンという意欲作異色作を経て構築された子供番組の正しくあるべき姿を体現している作品です。

想い出補正もたしかに十二分にあるでしょうが、評価は星5つ。
歴代ライダーが帰ってくる終盤五話は今でもそこそこな頻度で見返してしまう仮面ライダーの集大成!
もはや子供の頃のこのワクワク感に匹敵する作品には出会えないという予感というより確信は、なんだか寂しくも感じます。
オジサン

オジサン