昭和の天才数学者、岡潔と、彼を陰日向から支えた女房ミチの夫婦愛を描いたフィクションドラマ。
ストーリーは、妻ミチの視点から描かれている。
平凡ではつまらない、新しもの好きの女性、ミチは、働き先で出会った奇妙な青年、岡潔に次第に惹かれていく。彼の常人とは違う非凡ななにかに魅了され、ついていこうと決心する。父親の大反対にあいながらも、彼を支えられるのは自分しかいないと、強くあたたかく生きるのであった。
全体的に話をわかりやすくしたダイジェストのような展開と感じた。
岡潔の時系列に沿った事象があって、ドラマはあとから付け足したような感が拭えない。
戦争と、それに付随するナレーションも取ってつけたように感じたので、ウィキペディアで岡の経歴を調べてみた。
ドラマとは違い、仏教に帰依し、後年は超高次元の理想を以て、哲学、精神の考察や日本民族や女子教育などにも造形を深くしていたようだ。
当時おおくの文壇でおこなわれてきた対談をとおして、また多く残されている随筆によって、西洋的物質主義・共産主義を批判したりもする。
これは今のメディアでは語れまい。
数学の理論は数式を並べて、ひたすら尽くす妻を語るしかない。
が、そのために夫の人生を改変するのは事実をもとにしたフィクション未満ではなかろうか。
数学者や暗号を扱った映画には『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』『ホーキング』『ビューティフル・マインド』などあるが、どれも数学そのものより、ラブサスペンスや障害、友情に寄りがち。
ヒューマンドラマにしないと鑑賞者がついてこれない、増えないとの考えか。
それが市井の考える限界なのだろう。