たまこ

チェルノブイリのたまこのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
4.0
1986年、チェルノブイリで起きた史上かつてない規模の原発事故の真相と、事態収束に奔走した人たちの苦悩やソ連という大国の闇を描く。

1話60分前後、全5話。
2日で鑑賞したが精神がクタクタになった。

画面の中の映像はフィクションとはいえ、起きた事故もその収束のために命を捧げた人が存在することも事実。
そう考えると、一瞬たりとも目を逸らしてはならず半端な気持ちで観てはいけない気がした。

思えば、分子生物学の発展よりずっと昔から人類は原子力を兵器や発電に応用してきた。
つまり、DNA損傷のメカニズムなんて概念すらないうちに物凄い破壊力を持ったパンドラの箱を開けてしまったわけだ。
万一の事故が起きたら、爆発による直接の作用だけでなく、放射線が半永久的に放出され続けることになる。
そしてほとんどの人は被曝の仕組みや恐ろしさを知らずに生活をしている。

それがいかに常軌を逸した事態であるかを改めて思い知らされ震えた。

私は原子力の専門家でもないので、風力発電なのか太陽光発電なのか、ベストな代替案は分からない。そして原発に恐れは抱いても、日々電力の恩恵にあやかって生活をしている。
だから無責任に反原発を唱えるのは好きではない。

だけど、原子力発電は人類の最大の誤りの一つなのではという思いと、引き返せないところに人間は来てしまったという恐怖は強まった。

科学vs政治。
この対立は原発の是非のみならず環境問題、コロナ対応等にも共通する課題で、必ずしも科学を優先させることが常に正解ではないことは理解できる。
しかしこういう時に人はしばしば感情にコントロールされる。
政治家が保身に走るのも感情、科学者が都合の悪いデータに目を瞑り政治に寄り添うのも感情、市民が政治に怒り専門家の見解を無視するのも感情。

ただ、エビデンスが感情により左右され歪められることだけはあってはならない。その点では、科学の立ち位置はとても重要だと思った。

それなりに学問を修めた我々薬剤師も例外ではなく、社会で担う役割はかなり重大だ。
身が引き締まる思いがした。

チェルノブイリの事故が誰の責任だったかよりも、自らの手に負えない魔物を世に放ってしまった人類の愚かさが恐ろしくなる作品だった。

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