りっく

その街のこどものりっくのレビュー・感想・評価

その街のこども(2010年製作のドラマ)
4.5
震災をこのようなアプローチで描けるのかと感動した。不幸は誰に降りかかるか分からないが、震災後もその街の子どもたちは自分の力ではどうすることもできず、ただそれを受け入れることしかできない。そんな街を見ず知らずのふたりが、ただひたすら歩んでいく。

震災は自分が住んでいた街を破壊するだけでなく、心の拠り所であるはずの故郷という場所の意味合いを一変させる。だからこそ、故郷を想うことは、震災と向き合い、過去を受け止め、自分のなかで落とし前をつけることと等しくなる。ふたりのやりとりは一見軽口の叩きあいのように思うが、ふとみせる表情や会話の端々に、深い傷跡を滲ませる。

阪神淡路大震災は早朝に発生した。だからこそ、例えば深夜にポツンと灯っている部屋の明かりに意味が生じる。それが、この街で今でも生きている証である。その灯りが希望や未来への灯火となり、フィクションと現実が繋がるラストが美しい。
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