柏エシディシ

ウォッチメンの柏エシディシのレビュー・感想・評価

ウォッチメン(2019年製作のドラマ)
3.0
"史上最高のアメリカンコミックス"ウォッチメン"原作コミック"の続編。
こちらも思い入れがあるし、評価の高さは聞き及んでいたけれど、なかなか観るのが怖かった作品。ようやく。
その後コミックなどで後日談やスピンオフが幾つか作られているけれど、結局は完璧過ぎる原典の、大いなる蛇足にどれも過ぎないといつも思っている。
しかし、本作に関してはデイブ・ギボンズ先生が脚本参加しておりその正統性は保持しつつ。(当然、エンタメ産業を唾棄するアラン・ムーア先生は不参加)
気持ちのいいぐらい説明を排した作劇。
原作は読んでいて当たり前。一見さんお断りのスタンスが気持ちいい。
結論、面白かった。頑張りました。
アメリカ合衆国の現代史に「本当にヒーローが実在したら?」という大いなる思想実験という原作コミックスのコンセプトをその先に進めたもの。
製作当時勃興していたBLMと絡めた作劇は、時代性故の描き切れなさがやや残りつつも、やはりスリリング。
時間を置いて温めての鑑賞が功を奏し、脚色やキャラクターの顛末にも余裕を持って受け取れた。
もし発表当時に前のめりで観ていたら、うるさい方の原作ファンとして認める事が出来なかったかもしれない。
例えば、ロールシャッハ好きとしては、あのマスクの扱いやダイアリーの行方とか納得出来ない部分はあったのだが、精神的後継者とも言えるルッキンググラスが最後ああいう形である意味の敵討ちを果たすのは良い展開だっだと思う。
緻密な"時計仕掛け"を思わせる原作コミックスのテイストをドラマシリーズという形態に落とし込むアイデアや工夫も随所に見られて、且つ安易に展開を先読み出来ない脚本や構成も頑張っていると思う。
ただ、その分キャラクター描写がドライというか物語の駒の様に感じてしまう所があった。
漫画コミックスに対して映画やドラマというメディアの違いや特性を考えさせられると共に、改めて「コミックス」の芸術性の究極にある原作ウォッチメンの偉大さをこのドラマから返って立証される形になっていると思う。
柏エシディシ

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