長内那由多

ウォッチメンの長内那由多のレビュー・感想・評価

ウォッチメン(2019年製作のドラマ)
5.0
AmazonプライムでHBOドラマ『ウォッチメン』の第1話が無料先行配信中。アラン・ムーアの原作の続編。ショーランナーはデイモン・リンデロフ。恐れ知らずなHBO、攻めのDC。主演レジーナ・キング、トレント・レズナー&アッティカ・ロスの音楽がカッコいい。

第2話も完璧。デイモン・リンデロフのミステリアスで知性に訴える脚本とバイオレンス。監督のニコール・カッセルは『ウエストワールド』や『ベター・コール・ソウル』など近年の傑作群に参加してきた職人。今年の米監督組合賞を取っている。
それにしても毎話タイトルが最高。

第3話、ジーン・スマート登場。近年は『ファーゴ』『レギオン』など話題作に欠かせない名女優。『24』のローガン大統領の妻役で覚えている人も多いのでは。今回は30年後のシルクスペクター=ローリー役。心なしかノア・ホーリー風の作劇で、奇妙な挿話から始まる。

第5話、いよいよ物語の全貌が明らかになり始める。“ミラー男”ことルッキンググラスに扮したティム・ブレイク・ネルソンがいい。アルミホイル顔に浮かぶ哀しみ。地下で謎のアラームを押す様には懐かしの『LOST』デスモンドも過った。
この世界ではロバート・レッドフォードが大統領なんだけど(という事はサンダンス映画祭は存在しない?)、スピルバーグは健在で、93年に『ペイル・ホース』という映画を撮った事になっている。粗筋を聞く限り『シンドラーのリスト』と同じ演出で、オスカーを独占している。

第6話、悪夢のような記憶の無限回廊。『バードマン』でルベツキが見せた夢幻的長回しを思わせる演出と、美しいモノクロームに映える鋭利なバイオレンス。悪事は素顔でのさばり、ブラックヒーローは目の下を白く塗ってマスクを被り、鉄拳を振るい、やがてそれは血にまみれる。

第7話、いよいよラストスパート。村上春樹ライクな象の睡眠、今週のオジマンディアス劇場、そしてDr.マンハッタン!そうか『ウォッチメン』は彼が愛を希求(そして諦念)する物語でもあった。

第8話“1軒の酒場に入る神≠A GOD INTO ABAR”!ここまでの7話の在り方も変える異次元のストーリーテリング。全ての時間、全ての物語は同時に存在する。SF作家デイモン・リンデロフが『ウォッチメン』と結び付いた美しいラブストーリー。監督はニコール・カッセルが再登板。

第9話、完璧なフィナーレ。ようやくオチがついた“オジマンディアス劇場”、味わい深いルイス・ゴセットJr.。原作のスピリットを受け継ぎ、批評性とSFアメコミを融合させたリンデロフの達成。Dr.マンハッタンがいかなる時にも存在するように結末を知った僕らも過去(第1話)からビンジだ。
長内那由多

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