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ウォッチメンのKSのレビュー・感想・評価

ウォッチメン(2019年製作のドラマ)
5.0
世界が終わるというが、その世界という言葉の定義とは?をテーマにした作品。
最初の始まりから、途中の演出、最後の終わり方まで最高!情報量が多過ぎて頭がパンクしそう。

KKKを復活させた『國民の創生』、大義のために行われる裁きが描かれている『オクラホマ!』など映画の中で描かれてきた大義のための裁きと、それによる正当化が生み出す社会の歪みを見事に描いている。

アメリカの英雄史は子供には見せられない物語である事を劇中のテレビ番組で示したり、ナチスドイツを引き合いに出して、民主主義の象徴とされているアメリカ国内にもあるナチスドイツと同じ人種主義的思想を浮き彫りにしたりする。そして、恐れと痛みが生む暴力の連鎖の描写も見事。

本作の中で一貫する描写として覆面のヒーローは、顔が見えない事が示す肌の色による差別や性別による差別の外的な視線だけてなく、私は誰なのかという内省的な問いかけも含まれており、それはルーツとは何か血縁か、文化か、個人史かといった多義的な問いかけがある。

それを見事に描いたのが、夢を見る事で追体験させるパート。夢として他人の経験を追体験させる事で、外的な視線(社会における見た目による差別)と内的な視線(見た目による差別の内面化)が主人公の中で一つになる。そして、それを見た私たちも、その差別を追体験する事になる。そして、それぞれの登場人物が獲得していく思想的バックグラウンドも理解できるようになり、それが作品の物語に必然性を付与する事にも繋がっている。
この手法は今後作られるであろうVRやARを用いたドラマや映画、ゲームといったエンタメ作品において物語の奥行きを担保する手法として、誰かの物語を追体験するリアリティーある学びの手法として、本作の演出の方法は示唆的だと思った。
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