ヴィクトリア朝末期のイングランド・ロンドンを舞台にしたSFドラマ。
シャケの産卵のようにドバドバ生み出されるMCUに食傷気味な自分にとって、何か新鮮な切り口を与えてくれるような予感がしていた。
ある晩、一斉に異能力に目覚めた人々は「タッチト」と呼ばれていた。
タッチトは大半が女性であり、ただでさえ男性優位社会の19世紀においてそのような奇異な存在に居場所はない。
主人公モリーは、そんなタッチトを守るための養護院を率いるリーダーだ。
タッチトに発現する能力は能動的に使用できるものや不随意に発揮するもの、ある種の疾患のようなものまで様々ある。
タッチトの扱いは、いわばこの時代における障害者差別の様相をそのまま反映している。
ヴィクトリア朝とスチームパンクと異能力SFという組み合わせはありそうでなかった ものである上、LGBTを含むあらゆる差別問題を取り込むモダンな作品であり、各人物のキャラ立ちや多様性にも優れた素晴らしいプロットだと思う。
冒頭に書いたように、MCUに飽きてきた人には新鮮に思える部分もある。
しかし、最初から多くの要素を取り込みせいか、シナリオは少し散漫な印象だ。
進行が早い上、複数の人物が別々に動く様子を同時に展開させ、さらにはアマリアが時折フラッシュバックする未来の記憶がことさら話をややこしくさせる。
感情移入が追いつかないうちに話が進むため、せっかく用意してあるどんでん返しも驚く準備が出来ないまま流れてきてしまう。
ペナンスの言葉を借りるなら「試作品だから」ってところだろうか。
ただ本作は当初全12話構成だったようで、後半にかけてどっしりとした物語が見られるのかもしれない。
コロナの影響で製作が中断したそうだが、頓挫せず構想通りのラストエピソードまで早く観たい。