みや

海に降るのみやのネタバレレビュー・内容・結末

海に降る(2015年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

横須賀へ行くので事前勉強として鑑賞。原作既読。
原作からかなり変更されていて驚いた。これはもう別物じゃないか?深雪の父親は亡くなっており、義理の弟・陽生は一切登場しない。小説ではなかなか酷い父親だったが、ドラマ版では最後まで尊敬できる父親で格好よかった。
父が最後まで求めた「深海の宇宙」の謎に加え、父の死の真相を探るミステリの要素が強く、国の横暴な命令に振り回されるJAMSTECのお仕事ドラマの面も多く描かれる。ドラマ版はドラマ版で面白かった。

①髪の長さを注意してくれた先輩を嘲笑うような態度を取って嫌な女だなあと最初は深雪に対してマイナスイメージだったけれど、これくらい強気じゃないと生きていけない"男の職場"だと分かると応援したくなってくる。
国の管轄だからこそ自由にできないことが多々あり、思うように研究ができなくて皆が悩んでいるが、一回の潜航にかかる莫大な金額を考えると国も研究者もどちらも必死になる理由が分かるから、一概に国だけを悪だとは言い切れない。JAMSTECを世に広めようと広報課が深雪を亡父の跡を継いだ女性初のパイロットとして広告塔にするなど努力はしているものの、どうやってもJAXAみたいな知名度にはならなそう。なぜなんだろう?深海も面白いのに。

②父親が死んだ時の映像を観て、潜水艦内で閉所恐怖症で呼吸困難になって倒れる深雪。いや、海への憧れが減っていくわ!
研究者やパイロットにしたらそれぞれの仕事に誇りがあるから嫌なのだろうけれど、広報は広報で大切な仕事だから左遷みたいな感じで言われるのは可哀想。そんな深雪を励ますために6Kメンバーが母親のお店にご飯を食べに来てくれる場面が良かった。

③広報のお姉さんにも秘密を知られた結果、一緒に調査することになって嬉しい。こういう姉御タイプの人、大好き。でも実は裏幕の一人だったらどうしよう。
深海という未知の場所だからこそ、隠蔽や不正が可能になってしまう。現実でも私たちの知らない悪事が深海で広がっているのだろうか。

④お父さんの死の真相が明らかに。深海での事故、病気は怖すぎる。宇宙や飛行機も怖いが、深海も怖い。何もできない。音が無いのも怖い。そして死んでしまうのは勿論嫌だけれど、目の前で先輩が死ぬのをただ見ていることしかできないのもつらすぎる。

⑤「自分には何もできないから先輩たちに戻ってきてほしい」と土下座して頼む後輩くんが凄く良かった。こうやって先輩にお願いすることができるって凄いことなんだよ。深雪はたとえ広報でも仕事中は髪を結んだ方が良いと思うの。
色々な部署がみんなで力を合わせて国に立ち向かっていく熱い展開の先で、死亡事故が新聞に出るのは想像してなかった。敵も容赦が無くて面白い。

⑥ドラマで使われているのは本物の潜水船しんかい6500なのかな。泥の採取や岩との衝突など、リアルで興味深かった。
深海に異物を置いてきたことになるわけだけれど、それでも構わないのだろうか。簡単に獲りには行けないし。生態系の難しいことは分からないが、ちょっと気になる。
軍用機の隠蔽や政治家との癒着といったドラマオリジナル要素も面白かった。
深海研究の難しさ、国家施設の不自由さ、深海の美しさ、深海と宇宙の面白さ、未知の世界への夢。色々なことを学べて、色々なことを思わせてくれた作品だった。横須賀で海と船を見てくるぞ!
みや

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