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青天を衝けのtubameのレビュー・感想・評価

青天を衝け(2021年製作のドラマ)
4.7
2021年色々ドラマ観たけど、1本選ぶとしたらやっぱりこれ。観る前から楽しみにしていたが、出来は想像以上。所縁の地にも行ったくらいハマった。


幕末~昭和まで活躍した実業家・渋沢栄一の生涯を描く物語。長生きしたというのもあるが、ここまで人生に紆余曲折あった人物も珍しいのでは。故郷で藍玉を作っていた若者が運命の出会いと共に何度も変節し、激動の時代を駆け抜け、やがて日本の礎を築くまでになる過程はドラマチックで大変見応えがあった。


視聴者受けを意識してか、多くの大河で主人公がやたら善人として描かれる傾向がある中、本作の栄一は未熟な部分も欠点もある等身大の青年として描かれた。親近感がわくリアルな造形が良かった(史実無視して重大事件・人物に無理に絡ませなかったのも良かった)。
実際の栄一は女性関係が派手で知られるが、妾がきちんと登場したのも近年の作品では珍しかった(流石に1人だけだったけど)。
制作側にはどの人物も嫌いになって欲しくないとの思いがあったそうで、妻・千代との絆を感動的に描く一方で妾や後妻に対しても表面的な人物像でなく、現代感覚を採り入れながら人間味溢れる描写がなされており、とても素晴らしかった。
他にも従来の悪人イメージを一新する慶喜像など、本作は人物描写においては全編に渡って細やかな配慮と繊細な表現が目立った印象。登場人物が非常に多かったが、脇役や栄一と対立する人物にも心を寄せた丁寧で真摯な造りのドラマだった。派手な斬り合いシーンがなくても物語は面白く出来るのだと実感した。


主演の吉沢亮は熱演で、エネルギッシュな栄一に毎回惹き付けられた。
ただ、晩年の老けメイクが不充分で全く老人に見えず、終盤から年代がさっぱり分からなくなってしまったのだけが唯一残念。
高良健吾や大島優子など周囲は気合いが入っていただけに、並ぶと絵面の違和感が強くなってしまったのが勿体無かった。


ナレーション役として家康を配置し、時代を超越して語らせたのが斬新だった。それが現代演劇のような演出だったのも面白く、毎回の楽しみの一つだった。
その他、同じ大森脚本の「あさがきた」で五代友厚を演じたディーン・フジオカが同役を演じるなど、嬉しい仕掛けも。


他にも好きな点は沢山あり言及しきれないが、1年楽しませてくれて感謝。マイベスト大河に新しい1本が加わった。
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