タケオ

このサイテーな世界の終わり シーズン2のタケオのレビュー・感想・評価

4.5
 イギリスの漫画家チャールズ・フォースマンによる同名コミックを原作とした、Netflix限定配信ドラマ『このサイテーな世界の終わり』のシーズン2。
 前シーズンのラストから2年。逃避行の果て、警官にショットガンで撃たれたジェームス(アレックス・ロウザー)は重傷を負い、厳重な監視下で入院生活を送ることになった。前シーズンで連続強姦魔クレイヴ(ジョナサン・アリス)を殺害した件は正当防衛が認められ無罪となったものの、その直後に父親が亡くなるという更なる悲劇に見舞われ途方に暮れるジェームス。一方その頃アリッサ(ジェシカ・バーデン)は、母親とともに田舎にある叔母の家へ引っ越し、過去を忘れて新たな人生を始めようとしていた。しかしある日、突然2人の元にそれぞれの名前が刻まれた弾丸が送られてくる。特に気にしないアリッサだったが、彼女の身を案じたジェームスは慌てて車を走らせるが——。
 ジェームスはショットガンで撃たれたことで「死と再生」という決定的なイニシエーションを経験したため、必然的にシーズン2は主にアリッサについての物語となっている。前シーズンの最終回で「人生最悪の日」を経験し、自暴自棄に陥ったアリッサの「再生」についての物語だ。本シーズンから登場する新キャラクターのボニー(ナオミ・アッキー)も、アリッサと同様に自暴自棄に陥った人物である。アリッサもボニーも世の理不尽や不条理を前に傷つききってしまった人間のため、自らの実感の内に封じ込めることでしか世界の在り方を受け入れることができない。そんなアウトサイダーたちの姿に強烈なシンパシーを覚えてしまった。
 前シーズンと同様に、シーズン2もアメリカン・ニューシネマを彷彿とさせる作風となっているが、本シーズンは更にその'先'を描き出そうとしている。すなわち、世界の在り方を受け入れることができないアウトサイダーが「世界」と折り合いをつけるまでの姿だ。『さらば青春の光』(79年)や『ゴーストワールド』(01年)など、(アメリカン・ニューシネマとは異なれど)アウトサイダーが「世界」と折り合いをつけるまでの姿を描いた作品は数多い。しかし、前述した作品群がどこまでも辛辣な着地をみせていたのとは対照的に、本シーズンの着地はどこまでもスウィートかつ感動的だ。「私はどうすればいいの⁉︎」と叫ぶボニーに対して、アリッサは静かに返す。「わからないよ」と。複雑極まる世界の在り方を自らの実感の内へ乱暴に封じ込めることをやめ、複雑極まるものとしてそのまま受け入れる。そんな彼女の選択を見て、思わずボロボロと涙が溢れてしまった。理不尽かつ不条理な複雑極まる世界を前に、アリッサとジェームスは静かに手を取り合う。シーズン2のラストに、サイテーな世界(F***ing World)に怒り全てを呪うだけの2人の姿はもうない。2人が実感の内に封じ込め続けてきたサイテーな世界が終わる瞬間を、鑑賞者は遂に目撃することとなるのである。
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