TenKasS

フォー・オール・マンカインドのTenKasSのレビュー・感想・評価

5.0
歴史逆転モノのSFとしては完璧なのでは?と思うほど面白かった。
AppleTV+を契約して、オリジナルSFドラマ4つを1話ずつ順番に観ていくということをしてみたのだけど、結局これが一番面白くて、先にシーズン1完走してしまった。
もしこうだったらこうなるという第三者目線の歴史的事実のシミュレーションという部分よりも、それによりラディカルな価値観の変容が起こって、それに晒され右往左往する人たちの主観的な群像劇として描かれているのが良かった。
それ故、登場人物が全員何かしらの理由で欠点があり、ミスをし、キャンセルし、され、うまくいかずに足を引っ張る等々といったことが起きるのだが、それへの善し悪しの判断を基本的にはしていないことも偉いと思った。
話数を重ね後半に向かうにつれ、登場人物たちの主に規範的な要因による欠点が大きな出来事を経て多少軟化していくというのは、いかにも2019年頃という感じ。「価値観をアップデート!」というシンプルすぎる認識に近い楽観が垣間見える。ただそのように感じたのも事実だけれど、裏を返せばストライキのメッセージボードみたいな台詞を吐かせる映像作品ばかりな時(今も相当あるが…)にこのバランス感覚だった。とも捉えられる…のかもしれない。

映像的には9話でマーゴが重大な決断を下さんとするその時にお菓子の封を開けるその手元をスロー(コマ送り?)のようにしたのが1番ゾクっとした。マーゴというキャラクターが個人的に好きだからというのもあるかもしれないが…。
宇宙モノは一挙手一投足が命に関わるサスペンスになるので、シーズン後半のスペクタクルは胃に悪い。音楽もちょっと大仰。
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