わか

パレートの誤算 ~ケースワーカー殺人事件のわかのレビュー・感想・評価

4.2
「生活保護」
それは様々な事情で働くことが難しい人たちを救うための制度。

自分は、毎日働いて生活を切り詰めてなんとか生計を立てているのに、働かずに自分と大差ないお金を貰っている人たちがいる。
中には窓口に怒鳴り込む人や、支給されたお金でギャンブルに行っている人もいる。
彼らが口にする、働こうとしているという言葉も、果たして本当なのかと思ってしまう。
新任のケースワーカーの聡美は、受給者と向き合う際に常にそんな邪念が常に心のなかにある。

そんな彼女の気持ちを理解した上で、彼女にケースワーカーとしてのアドバイスをしてきた先輩の山川が、訪問先のアパートで殺される事件が起こる。

彼の死後、人としてもケースワーカーとしても素晴らしいと思っていた彼の知らない一面が次々と明らかになり、聡美にもある疑念が湧いてきて‥

生活保護という制度を通して、日本の闇の部分を垣間見る本格的なサスペンス作品。

人を信じるということの根底が揺らぐ、誰を信じていいのか分からなくなる作品だった。
聡美自身もそんな疑念に何度も駆られながらも、かつて山川が教えくれた、人間を信じること・他人と真摯に向き合う姿勢を貫き、やがて一つの真実にたどり着く。

果たして黒幕は誰なのか。
闇に光を当てることで明らかになる、この国の闇の深さとにゾッとする作品。

原作とあわせてオススメしたい一本です。
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