Fitzcarraldo

ザ・ラウデスト・ボイス―アメリカを分断した男―のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

4.8
第77回(2020)ゴールデングローブ賞リミテッドシリーズ / テレビムービー部門でラッセル・クロウが主演男優賞を受賞した作品。

米Showtimeで2019年6月から8月にかけて放送された全七話のミニシリーズで、米New York誌の記者ガブリエル・シャーマンによるベストセラー"The Loudest Voice in the Room"が原作。

"Bombshell"(スキャンダル)のジョン・リスゴーも思わず奥歯をグッと噛み締めてしまうほどクソ憎たらしいロジャー・エイルズ役を見事に演じていたが…いやいやラッセル・クロウ版は、それを超えてくる腹立たしさ。まぁ映画の3倍の長さがあるので単純に比較したらジョン・リスゴーに申し訳ないが…

"Bombshell"は、シャーリーズ・セロンが製作にも名を連ねてるだけあって、自分が演じたメーガン・ケリーを中心に描かれているのだが、このテレビ版は最初から終わりまでどっぷりロジャー・エイルズ!ニンニク野菜マシマシ状態…もうお腹いっぱい。それでも翌週にはまた並んでしまうという中毒性もラッセル・クロウ版にはある。一辺倒じゃない簡単に掴みきれない奥深さがラッセル版のロジャー・エイルズにはある。

映画版だと短い尺だしメーガンメインということもあり、どうしてもロジャーの役回りは権力者の変態白ブタという短絡的な表現というか、分かりやすい敵として終わってしまう。

しかし本作では、ロジャー・エイルズの人間を始終描き通す。これどこまで本人に迫っているのか、どこからがフィクションなのか全く分からないのだが、もうこれ…ありの〜♪ままの〜♪姿見せ〜るのよ〜♩だろうと思わせる説得力が半端じゃない。

それは当然ラッセル・クロウの演技力によるところも大きいと思うが、取材力や台詞、物語の構成も素晴らしい。

全く関係ないが昨夜、邦画の「菊とギロチン」を流し見してたのだが…もう…ね…イヤんなっちゃうよ。このレベルの低さには…もちろん役者の演技力も低いのだが、台詞ね。いかに台詞がチープかということを表現できないのが悔しいのだが…これは見れば分かる。

そして撮影も長回しにすりゃエモーショナルになると思ってるのか、単純に予算がなくて撮影スケジュールがタイトだから、やむなく長回しを多用してるのか…それは知らんが、とにかく冗長だし若者が徒党を組んでワンワン吠えてるだけにしか見えない。ほんと邦画には多いよなぁこういうシーン。そこに至るまでの積み上げもない、唐突に頑張ってる感いっぱいの役者たちが各々の仕事をこなしている。例えばここに超強力の助っ人外国人選手としてホアキン・フェニックス、マシュー・マコノヒーを登場させても無理だろうな…いくら役者の力が跳ね上がったところで、話の展開と、なぜこの物語にこのシーンが必要なのかという重要性の無さと、台詞のチープさに…完封負けだろうね。
勘弁してくれよ…これだから邦画見たくなくなっちまうんだよな。
当然、菊とギロチンも途中で見るのやめた…時間の無駄。

正直、これは役者も可哀想…。
めちゃくちゃ下手に見えるから出演するだけで大きな損を被る。
この作品は一般公募もしてたけど、あの女郎屋で不倫大先生の東出くんとの絡みで無駄におっぱい出してた娘とか…あれ一般公募から選ばれたのか⁈面倒だから詳細を調べてないが、夢のためにオーディション受けた多くの人の中から勝ち取った役が、あんな無駄なことに消費されるのは許し難い。
完全におっぱいの出し損である。
まったくよー!役者に対して愛がねぇーよ!この監督は。

全く関係のない感想をここに記してしまったが、それだけ溝をあけられているということ。レベルが違いすぎる。

今回のコロナ禍で全国民に明らかになったことであろう、日本史の後進国ぶりが。世界各国がビシッとバシッと対応を進めるなかのマスク2枚問題。打ち出の小槌か!って何度ツッコミをひとり入れていたことだろう…

それくらい、政治も文化も世界に離されているという自覚をもつべき。クールジャパンなんて自分で言うことじゃないし、世界からは冷ややかな目でしか見られてないことは認識したはずである。

政を司るに相応しい人を見抜く目を養うことが、いかに重要なことか…同様に芸術を見る目を養うことが必要である。

話を戻す…。

"Bombshell"のメーガン・ケリーの超絶技巧メイクも素晴らしかったが、本作のラッセル・クロウへのメイクもまた素晴らしい。メイク誰がやったか調べてないが、カズ・ヒロと遜色ない技術ではないかと感じる。

あのレベルがゴロゴロいるなんて…やはり恐ろしい場所である。

メイクだし…腹に入れてるし…というノイズが一瞬もなかったのがまた凄い。全く違和感なし。あーぁすげぇなぁ…

アップで寄った時にメイクやカツラとバレて萎えるくらいなら、はじめからそういう体型でハゲの奴をキャスティングすればいいじゃねぇかと昔なら思うところだが、いまの技術の高さにはもう何も言うことありません。

この技術を日本の時代劇、大河ドラマとかに輸入すればいいのに…
何年も大河見てないから知らんが、まだまだカツラ乗ってる感あるし、月代の境目がねまだ目立つ。いまは知らないが…

エンドクレジットでSienna Millerとあるので、あれ?いねぇな?途中から出てくるのかな?と期待していたのにラストまで出てこないから、おかしいなぁと調べたらロジャー・エイルズの妻ベスがシエナ・ミラーだった!ウソでしょ!
あんなオバさん?随分と老けたなぁと思ったら、あれも超絶技巧メイクか!マジでワカンナイ。

"Layer Cake"でダニエル・クレイグと超エロい下着姿で絡んでたセックスシンボル的なイメージしか頭に残ってないから、まさかあんなオバさんがシエナ・ミラーとはつゆにも思わず…なんかベスの顔へんだなぁと第一印象は思ったが、まぁよくいる白人中年女性の顔か…と勝手に納得していた。
やっぱメイクすげぇわ。世の中の全ての女性が、この超絶技巧メイクを習得すればいいのでは?

もう何百万もかけて整形しなくて済むし、流行や気分によっていくらでも何回でも変えられるんだから着せ替え人形のようで毎日楽しいのでは?今日はアゴ尖らして小泉今日子風とかね…。

因みにテレビ版の本作にはメーガン・ケリーは出てきません。実際のFOXのニュース映像の中で本人は出てくるが、登場人物としては出てこない。

映画版でグレッチェン・カールソン役を演じたニコール・キッドマンの扱いが完全に無駄遣いであったが、テレビ版ではその役を我らがナオミ・ワッツ嬢が演じていて映画版より役回りは大きい。これナオミ・ワッツも超絶技巧メイクしてたのか、単に歳取ったからなのか…上唇に細かい縦皺がいくつも入っていて気になったな。あれも超絶技巧で作ってるのか?単純にもういい歳だっていうのもあるけど、まだあんな皺が入る歳じゃないと思うんだよなぁ…どっちだろ…?


細かく語っていたらドンドン長くなるので…この辺で。

とにかく、9.11からトランプ大統領までを網羅したFOX NEWS版アメリカ現代史は一方向に偏っているが、我が国にもそのまま通じるところがあるので、それを知るのもオススメです。


ー採録ー

第一話

ロジャー
「必要なのは視聴者が見たいと思う人間だ。なぜなら、これはfuckinテレビだからだ!」

イアン報道局長
「その視聴者に情報を知らせるのが仕事だ」

ロジャー
「彼らは情報を知りたいんじゃない。知った気になりたいんだ」


この台詞なんて安倍晋三とか言ってそうだもんな…いや言ってるだろうなぁ…民放各局のお偉いさんも同じこと言ってんだろうなぁ…
気持ち悪ぃなぁー。



第四話

ブライアン
「まぁ一種のゲームだ。野球だとすると、ウチが一塁でACORNのネタを拾って公表する。二塁では、他のみんながウチのネタを取り上げる」

ジョー
「でもそれってフェイクってことでしょ?」

ロジャー
「誰がフェイクだと言った?」

ブライアン
「実話でもフェイクでもいい。三塁では"記録の新聞"のニューヨークタイムズが、皆が話してるネタなら重要に違いないと言って、ウソでも何でも報道しなきゃならなくなる。最後にはフッ…民主党が多数を占める議会が調査もせずにACORNへの資金を打ち切った。我々のせいでな。これぞホームランだ」

ロジャー
「ウチが引き起こしたことだ。ニュースを追うだけじゃない。ニュースを作って、世界を変えてる…。ジョーよく聞け。世の中には何を信じていいのか分からない人々がいる。リベラルなメディアの弊害だ。誰がいいヤツかも見分けがつかない。彼らに考えろと説いても反発される。だが感情を動かすことが出来たら支持を得られる。オレはゼロから局を始めた。"みんなからエイルズにはニュースは無理だ。失敗する"とバカにされた。だが今はどうだ?この部屋を見回してみろ。この連中がウチの放送ち出資し続けてる。みんな、儲かりすぎて笑いがとまらん」

ジョー
「でもジャーナリズムは…」

ロジャー
「歴史だ。いいか。歴史は勝者によって綴られる。そして、勝つのはオレたちだ」


いまの日本。完全一致。
リベラルなメディアの弊害が起因っていうのがね、鋭いね。まっそうなんだろうね実際。
誰がいい奴かも見分けがつかないってまさにいまの日本じゃん。
誠実がどうかなんて国会答弁ずっと見てりゃ分かるのによ。まだ支持率保ってるのが信じられん!




第六話

ロジャー
「ドナルド(トランプ)は集会では、自分がちゃんと理解してることを話すべきだ。例えばビルや橋の建設や基礎構造の話とか。アメリカのための大きな展望とか」

ベス(妻)
「壁もね。彼は大成功した建設業者よ。やり遂げる」

ロジャー
「支持基盤を守るんだ。支持者を維持すれば勝てる。FOXがしたように、1つか2つ、単純な論点を作ってそれを繰り返す。徐々にそれは人の心に染み込んで、じき、最も馴染んだ真実になる」

ベス
「ワクワクするわ」


自民党がやってるやん同じこと。
あーやだやだ。

もう途中からロジャー・エイルズと安倍晋三が重なって、早くコイツを何とかしろ!と自分のことよように前のめりで参加型視聴。
ロジャーが解雇される事実はもう知っているわけだから、あとはどんな倒し方をするのか、それによりどんなカタルシスをもたらせてくれるのかと涎だらだら待て状態。

んーラストは北島康介ばりの超気持ちいい!と言ってTHE ENDしたかったのに…ちと弱かった。
正直気持ち良くはない。残念!
Fitzcarraldo

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