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有村架純の撮休のrayconteのレビュー・感想・評価

有村架純の撮休(2020年製作のドラマ)
5.0
有村架純の休日を描くオムニバスドラマ。
様々な監督が参加しているミニシリーズだが、とりあえず1話目を見てほしい。
いやむしろ、1話目だけ観れば十分かもしれない。
これは、無数にある毒にも薬にもならない企画ものテレビドラマとは一線を画している。

第1話は有村架純が実家に帰省して母と会う物語を、是枝裕和監督で描くもの。

家族は、知っているようで全然知らない奇妙な存在だ。
たとえば子供にとって母は母以外の何者でもないが、母にだって親になる以前の人生や家の外での生活がある。
でも長く一緒に過ごしているからこそ、家族のそういう部分に対する想像力は失われていくものだ。
この第1話は、そういった日常に内在するミステリー、あるいはサスペンスを、日常のテンションとシームレスに紡いでいく。
淡々としているからこそ、薄っすらと背筋を凍らせるような寒気が走り、家族が複数の別々の人生の集合体であることを思い知らされる。
それはつまり、家族は常に狂気と隣り合わせでいながらギリギリで均衡を保っているにすぎない危うい関係性だということ。
家族を大切にしなければならないのは、一番壊れやすいからなのではないだろうか。

正直、単なる企画もののドラマだと侮っていたが、これは家族ドラマの傑作だ。
逆に有村架純が本人役で出ているというフックが邪魔にすら思えるほどに。

第1話の出来があまりに良かったので全編通して観たけれど、やはり第1話の出来は超えなかった。
他の話が悪いわけではない、むしろ有名女優のプライベートというフックを上手く使って、どの監督も個性豊かに作り上げていた。
けれど、第1話の完成度はあまりに次元が違うのだ。こんなの初回に出されたら、他の監督はたまったものじゃないだろう。
メディアで目にする是枝裕和監督はいつも理知的で大らかに見えるけれど、意外と負けず嫌いな性格なのかもしれない。

何度も言うが、とにかく第1話、これだけでも観てほしい。
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