さくぽて

岸辺のアルバムのさくぽてのレビュー・感想・評価

岸辺のアルバム(1977年製作のドラマ)
4.0
ずっとみたかった!追悼山田太一で観ることにした。U-NEXTに感謝。
1話目から電話の男にひきこまれるね。
さあ、最後までみてみよう。

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わあ、一気に観てしまった。
一見、幸せそうな、どこにでもいる家族。
でもそれぞれに満たされない思いがある。
昭和感満載のお父さん、
専業主婦の孤独なお母さん、
何かいつも不満気なお姉ちゃん、
そして家族の純粋さを唯一持ち続ける繁。
 
前半はお母さんの不倫にみているほうも、
どうなるどうなると気が気でない。
街で見かけて、一目惚れ、イタズラ電話から
発展する関係。よく考えたら気持ち悪い。
でもそれがイケメン中年で物腰柔らか、
夫とはまるで反対の人。
私は嫌いなタイプだけどね!
お互い家族がいるので、壊さない関係。
そしていつの間にか、体の関係へ。

それを知ってしまうのが繁。
大好きなお母さん。
秘密をぐっと胸の中にしまい、
受験生なのに集中できない。
学校から家に電話をかけては、母が浮気しないかチェックする。かわいい。

姉は姉で、アメリカ人に騙されて、
強姦されて妊娠。
そのアメリカ人に立ち向かうのも繁。
勝てるわけないのに、黙ってられない。
ほんといいやつ。

父は父で、会社の経営が傾き、
東南アジアから女を入国させて、
水商売へ斡旋する仕事をイヤイヤしている。
それも繁だけが知ってしまう。

家族の秘密を1人で背負い、
爆発してしまう。
家を出て、中華屋さんで住み込みで働く。
根を上げず、真面目に働く。
ほんといいやつ。

担任の津川雅彦が、
繁くんは受験とかじゃなくて、
もっと自分を活かせることがあるはず、
僕は彼が好きなんですと
なかなか先生は見る目があったな。

そして、あの多摩川決壊へ。
父親の会社は倒産し、家は流されてしまう。
流されそうな家の中で夫婦は初めて本音で話す。
そうなのだ、繁の言うとおり、
嘘だらけ表面を取り繕って守っても
心は虚しい。
体裁だけをよくして、それに何の意味がある?

家は流されてしまったけれど、
家族はちゃんとまた大事なものに気づくことができた。
繁の善良さが、あざとくなくて、
ほんとみていて救いなのだ。
国広富之って、最近はあんまり出てないが、
この役は本当にハマり役。

1977年、私が生まれた年。
この時の八千草薫と私が同じ年でもある笑
でも今みても、
大事なところは何も変わらない。
学歴や、社会的地位や人から評価されることより、大事なことがある。
繁をみていたらよくわかる。
竹脇無我演じる男みたいなのが一番タチ悪いよな。お父さんより!
お父さん、お母さんが浮気して怒ってるけれど、お母さんがここから出て行きたくない、
あなたといたいの言うと一瞬安堵したような顔がみえた。杉浦直樹のそういう感情滲ませるのが上手いな。

ドラマ史に残る名作、その通りに
素晴らしい作品だった。
津川雅彦、風吹ジュンもよかった。
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