ジョンマルコビッチ総統

鎌倉殿の13人のジョンマルコビッチ総統のレビュー・感想・評価

鎌倉殿の13人(2022年製作のドラマ)
4.6
時を経るごとに三谷監督作品は深みを増していると思う。
かつては舞台やシチュエーションドラマ、コメディの色が濃かった作風で、それゆえに舞台装置としてキャラクターという側面が強かった登場人物たちは、軽快さや気やすさを感じるもののドラマの深みは今ひとつという印象だった。しかし近年はひとりの人間のその可笑しさや狡さ、恐ろしさ、健気さなどすべてをひっくるめた人間味を主軸に置き、群像劇として深みを増している。
同じ大河でも新撰組はエンタメとして気軽で面白かったが、本作はエンタメとしても人間ドラマとしても珠玉の出来であり、個人的には三谷監督の最高傑作に思える(次点は清洲会議だと思う)。

本作はエンタメ作品の騎手として映画ドラマ界をひっぱってきた三谷監督のそのスキルを存分に発揮して、上記の軽快さと深みがバランスよく配置されており、ともすると殺伐としがちな粛清だらけのドラマをうまくエンターテイメントとして昇華している。
最新の研究や空白部分を巧みに使った歴史物なのにある意味先の見えない脚本。コメディからシリアスまで、あるいは画面の端々まで積み上げられた伏線と登場人物たちのドラマ、脚本と共に画面を作り上げた一流の製作陣と役者陣の名演(特に義時役の小栗旬)、そのどれもが素晴らしい作品だったと思う。

最初から最後まで面白く、回を追うごとに深みを増していくドラマにハラハラした楽しい一年でした!

最初の軽さに試聴を諦めた人は、あのホームドラマ部分を後半の伏線だと思ってぜひ今一度見てみていただきたい!
そしてドラマを見た後は北条氏の故郷、伊豆にぜひ来ていただきたい!