いのしん

カルテットのいのしんのレビュー・感想・評価

カルテット(2017年製作のドラマ)
3.8
大好きな映画「花束みたいな恋をした」を手がけた坂元裕二と土井裕泰による作品ということで気になって視聴を始める。有名な唐揚げレモンのシーンは第1話だったのね。
運命的に見える出会いをした4人、というシーンから始まる本作にも期待が高まる。こういう出会い方、良い脚本だなと思う。4人がクセありすぎて(個性的で)、大筋のストーリーから急に脱線する感じが、カルテットドーナツホールの魅力を引き出していて良い。みんな夢は同じだけれども、考えていることや価値観はそれぞれ違う。
余命9ヶ月と嘘をついているピアニスト・ベンジャミン瀧田(イッセー尾形)から仕事を奪った真紀(松たか子)に対し、別府(松田龍平)がそのやり方はどうなのかと問いただすシーンで持論を展開する真紀は第1話の名シーン。好きなことで生きていくを仕事にできなかった人は、趣味にするのか、それでもまだ夢を追い続けるのか、決断しなくてはいけない。夢を追い続けている者同士なら、その座を奪い合うのは当然のことである、と。
3話。過去を暴かれることに怯えるすずめ(満島ひかり)のお話。両親が嫌で家族と相性が悪くても、血のつながらない仲間と同じ屋根の下で暮らし、「おかえり」と待っていてくれる帰る場所があるなら、それでいいじゃない。真紀の「泣きながらごはん食べたことがある人は生きていけます」は最強の言葉。ここまでの3話を通して、終始満島ひかりがかわいい。
第8話。好きな人のために頑張れるって良いね。別府のことが好きという気持ちを抑えて、真紀とうまくいくように立ち回るすずめ。別荘売却の危機の原因が自分たちのだらしなさにあると知れば、別府を困らせないようにバイトを始めたり、コンサートのチケットをプレゼントしたり。それでいて一人の時は別府との二人の時間を思い返して涙を流す。なんて切ないのだろう。片思いがよく表現されている。「今死んでも良いかなってくらい今が好き」という真紀の言葉も良い。今を大切に生きていきたい。
総評:良い。自分の好きなことが共通している仲間と出会え、それぞれが個性的で、お互いを否定することなく欠点を補いながら一つ屋根の下で暮らせるとは、なんて素敵な関係だろう。新卒で就職して電車に乗ってオフィスに勤める、それだけが人生じゃないんだな、ということ。会社を辞めて自分の好きなことをしたって良いじゃないか。家森(高橋一生)の冷静かつ鋭いツッコミと、理論的に展開する持論。クスッと笑いをとるメンバーのムードメーカー、かつイケメンな感じは良いキャラしてる。