きりま

カルテットのきりまのネタバレレビュー・内容・結末

カルテット(2017年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

カルテット

当時話題だったけれど、見られていなかった作品。軽井沢の景観が弦楽合奏の雰囲気とマッチしていて、ムードに包み込まれる感覚があった。
1stVnマキさん(松たか子)、2ndVn別府くん、Vla家森さん、Vcすずめちゃんの4人はそれぞれの理由で、ある日のカラオケボックスにいた。同時にドアを開ける4人。その出会いから、カルテットの結成、軽井沢での共同生活が始まる。
口に出して伝える言葉と、口に出さないで伝える言葉の2つがあることについて考えさせられた。
言うことで気持ちは伝えられるけれど、言わないでも伝わることもある。言わないと伝わらないこともあるし、言わないと別の意味を伝えてしまうこともある。
からあげのエピソードがまさにそう。作者もたぶん意識してて、最初と最後でからあげのエピソードが出てくる。このようなお互いの読み合いや暗黙の了解で人と人とはコミュニケーションをとっているんだ。
さて作品としては、ミステリーを軸に恋愛、夢、家族、信頼、裏切りの人間ドラマが描かれ、一本の筋書きというより多重の思惑が絡み合う構造になっていた。登場キャラはさほど多くないものの、だからこそそれぞれの過去や強い思いが行動に投影されたり(されなかったり)した。カルテットの4人は、仲間のことをしっかりと信頼している。それは演奏仲間としてだけではなく人として。でも信頼していても秘密を全て話すわけではない。それが人と人との関係であり、仲間を守り思いやる行動でもある(と本人は思っている)。
個人的には満島ひかり大ファンなのですずめちゃんばかり注目してしまった。金儲けのために親に利用され、決別し、世間から軽蔑されて生きる人生。「どうなってもいい」と、ある意味前向きになれるのがカルテットでのすずめちゃんの姿だった。でも隠し事をずっと隠したまま関係を続けるのは難しい。もう1ステージ上の状態で関係を続けていくには「腹を割って」話すことが必要。情熱にアツい訳ではない4人だから、そこがすごく苦手。だからって殺していい訳ないし、逃げていい訳ではない。
仲間はそれを責めるのではなく、仲間だから、認める。仲間だから受け入れる。
世間のルールと、仲間のルールがあるのだと思う。その「ニュアンス」の世界を描く物語だった。
「咲いても咲かなくても花ですから」マキ
きりま

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