都部

行列の女神~らーめん才遊記~の都部のレビュー・感想・評価

3.8
通称:ラーメンハゲでお馴染みの芹沢の性別変更という要素に一抹の不安を感じてはいたが、いざ蓋を開けてみれば原作の意をしっかりと汲んでおり、実写ドラマとしては良作と呼んで差し支えない出来なのは嬉しい驚きだった。原作は良くも悪くも人間描写の灰汁が強いので、登場するラーメンも込みで原作の展開を忠実に再現しながらも、万人向けに呑み込みやすい形に人物や話を再構成しているのは判断として正しいように思えて、芹沢やゆとりの性格の難をキッチリと描写しながらもキャスティングを活かしてコミカルな遣り取りとして昇華させているのは見事だった。

また個人的にはエピソード構成も良かったように思う──原作の序盤のエピソードを中心に作品を組んでいるが、その一つ一つの案件が芹沢が直面した薄口と濃口を巡る葛藤と通じる形で出力されており、段階を踏んで語られるエピソードとして統一性がある。だからこそ最終話はドラマの最終回ということである程度の区切りを要求させられるためか、若干 駆け足な結論という印象を覚えてしまったのも事実で、語り部であるゆとりのドラマが途上に終わってしまっているのは歯切れの悪さを感じざるを得ない。

しかし鈴木京香の存在により場面場面がしっかり締まっているというのはやはりあって、料理研究家のゆとりの母を演じる高畑淳子との演技のアンサンブルは、流石は二人とも一流の女優だけあって画面に華がある。原作再現度の高さを誇るエピソードもファンとしては嬉しく、原作の良さを発揮しながらもドラマとしてのテンポ感や見栄えなどがよく考えられていたように思う。
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