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Gentefied/ヘンテファイド シーズン1のKSのレビュー・感想・評価

5.0
メキシコ系移民として暮らす3世代の視点の違いを描いた日常生活作品。
変わるモノと変わらないモノ。

コミュニティの変化は、そこで暮らす一人一人の小さな変化の総体である。

第2話
ビル・クリントンの演説とトランプの演説が全く逆の話をしているという絶望感。

第3話
同僚たちとのメキシコカン・テストというお遊びを通して、コメディチックにメキシコ人とは?という国民性という幻想と移民という立場も一緒に描く。

第5話
コミュニティの描き方が多層的で面白い。
あるひとつのコミュニティの中での、マイノリティに対する差別問題と土地所有者と店の経営者という立場の違いの問題を、一つの壁画を通じて日常生活の問題として描き出す。

第7話
エリックの決断するシーンは良いシーンだと思う。全ての人が自分の思い通りになる訳ではないし、そうした時に、相手を尊重するとは、こういう事を言うだろうなと思う。

第8話
はじめから嫌味ばかり言っていた母親を主人公に据えた回。ずっと描かれてこなかった彼女の日常を描く事で、このコミュニティが置かれている社会的な立場にスポットを当てている。
それだけでなく、彼女の発言にも、彼女の視点から見えている社会像に裏付けされていた事が分かるという意味で、登場人物たちの多面的な描き方に繋がっている。
その多面的な描き方は、個人の小さな人間関係の総体としてコミュニティが形成されている事を示しており、コミュニティという一言で示される言葉の内実にある複雑さを体言しているような作品だなと思った。

あと子供がひとり旅をしようとした時に、これまでのありきたりなドラマだったら、探す場面があったりするが、本作での描写は、普通にやってきて旅の手伝いをしに来たんだという所とか、どんな相手だろうと尊重することのやさしさが出ていて良いシーンだなと思った。

第9話
ギャングスタラップ的な音楽に合わせ、ギャング風演技のエリックが本のカートを押す。これは、知識という武器を持て。というヒップホップでもよく語られてきたテーマの一つだと思った。

本作は、コミュニティ内の立場の違いに対する描き方が対立していても、対話をして、立場の違いを明確に描く所。有耶無耶な表面上のハッピーエンド演出をしないトコが好き。
いつ自分の立場が危うくなるか分からない不安が、コミュニティの中にずっと流れていたが、その問題の根源を取り除けないコミュニティにおいて、この問題をどう解決する事ができるのかという、少しずつ描いてきていた問題の確信を突いた回。

第10話
個展での母親の一言“怒ってる所を書くと思ってた”は、8話があるから生きてくるセリフ。
マイノリティである事がアートとして消費されていることへのアンチテーゼが、そいつらにとってはまたアートとして消費対象になる事を描いた個展シーンのラストの感情をどう言い表していいのか分からないコミュニティのあり方と矛盾した社会の構造がごちゃ混ぜになった、好きなシーン

Cuco「Lo Que Siento」がかかるシーンは、メキシコ系移民の彼が、新たなアイコンになっているという意味でも面白いし、劇中でマリアッチも新しいモノを取り入れないと生きていけないという描写があったが、Cucoは「Amor de Siempre」でマリアッチ版をリリースしたりそうした部分は、文化と変化が一つのテーマとなっている本作だから、印象的なシーンになるように彼の音楽を使ったのかなとも思った。
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