サンタフェ

THE LAST OF USのサンタフェのレビュー・感想・評価

THE LAST OF US(2023年製作のドラマ)
3.8
とんでもない人気を誇るゲームを実写ドラマ化しとんでもない人気を現在進行形で誇っているドラマ。

私はわりとゲーム原作の映像作品が苦手気味なのですが、残念ながら本作もあまりこの苦手意識は克服できなかったかなぁ。

ゲームの特徴として、ゲームは基本的にプレイヤー操作のパートで「問題解決」「バトル」「アクション」といったエンタメ要素が確保されており、物語(ストーリーパート)はその合間を埋める存在であるというところがあります。それゆえに、じゃあ果たしてストーリーパートだけ見せられても面白いのかという問題が私にとってはあります(要は面白くないと感じてしまうことがほとんどなのです)。

本作も基本的には同様で、1話、2話、3話、5話などキャラクターの死が物語の盛り上がりを担っていますが、正直なところ脚本的に何か特別なひねりなどは感じられず「ただキャラクターが感染して死んだだけ」という印象を拭えなかったのですよね。3話だけは物語そのものより「中年男性カップル」でエピソードの意義が完結しちゃってるのでそれで良いのかもしれませんが。もちろん創作において「人が死ぬ=面白い」なので、まぁつまんないことはないんですけどね。

同ジャンルでいうとウォーキング・デッドがありますのでそちらと比較しますが、序盤の妻を射撃しなければならない男性のエピソードだったり、農園で行方不明になった女の子を探すエピソードのオチだったり、といったシナリオに比べると、正直脚本的な面白さが全然低いんですよね。

やはりプレーすることでエンタメ要素やキャラクターの愛着を補完できる前提で作られたゲーム用の物語では視聴という受動的な映像作品に採用するには物語の強度が全く足りていないんじゃないかと感じてしまいました。唯一ドラマとして面白いエピソードだなと感じたのはエリーvsカルト神父のエピソードくらいですかね。最終話も設定としては精神的な葛藤や単純に敵を殲滅する戦闘戦術などなどかなり膨らませられそうな話なのに、展開としてはジョエルが無双して全員殺すだけというのも象徴的でした。

結局、シーズンを通して一番おもしろかったのはジョエルとエリーが「おじさんと女の子」という鉄板シチュエーションで絡む時の和みであり、物語=ストーリーが凄い!と聞いていた前評判からの期待値には個人的には全く到達しませんでした。主演2人の演技は本当に素晴らしくて、永遠に2人が絡んでるところを観たかったです。

一方で、本作のようなセカイ系っぽい精神の作品(ヒロインが世界の危機を救える存在であり、主人公が世界とヒロインを天秤にかけ葛藤し、かつヒロインを選ぶ)ってあまりアメリカの作品で観たことがなかったので、かなり新鮮でした。おじさんと女の子というシチュエーションも含めて、なんか日本のオタクコンテンツっぽいなと感じました。

役者、美術、世界観など表層は総じてめちゃくちゃレベルが高くて楽しい作品だったので、そこはさすが天下のHBOでした。ゲーム履修者の方にシーズン2の物語の方が面白いと教えて頂いたので期待して待ちたいと思います。
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